第4話
2学期も終わり、もう冬になった。雪は積もっているし、辺りを見回すと家の前に雪だるまが作られているところが多い。
今まで当たり前に横にいた星亜ともかれこれずっと会っていない。
僕はやっと星亜の気持ちを理解出来た気がする。
「はぁ、死にたい。」
とうとう僕も、アイツの口癖がうつったか。
なんて考えていると後ろから声をかけられる。
「何言ってんだよ。蒼」
聞きなれた気もするが、どこか懐かしい声。
ハッと後ろを振り返ると、そこにはやせ細った星亜がいた。
「星亜、星亜なのか…?」
「見ない間に頭おかしくなったみたいだね。
僕に"死にたいなんて思わないで欲しい"なんて言った蒼はニセモノ?」
「いや、それは違う…。」
「蒼、俺の家に来ない?」
「え?あ、もちろんだよ。」
「それはよかった。」
星亜に会えなくてあまり眠れなかった日々。
あまり体に力が入っていなくて、何かを考えることが難しい。
両サイドに雪が積もっていて、車通りが少なそうな場所。
「蒼。ここが__」
ドンッ
睡眠を十分に取れていなかった僕は、
横断歩道で左右を確認する前にフラッと倒れてタイミング良く通った車に轢かれた。
「あおい、あおい!!!」
星亜がスマホを取り出して救急車を呼ぶ。
「蒼お願い…起きて……」
結論から言うと、俺は即死だった。
星亜は大号泣していた。それはそうだろう。
同じ場所で、自分の提案で、自分のせいで
"2人の親友が死んだんだから"
「ごめんなさい…ごめんなさい……
俺のせいで蒼が…俺があの時蒼と帰らなければ……ごめんなさい…生きてて…ごめんなさい……」
星亜は俺の両親に土下座している。
「もう、頭を上げてちょうだい…?
蒼も最期に、星亜くんと会えて嬉しかったと思うわよ…星亜くん、生前の蒼と仲良くしてくれて、ありがとうね…」
両親も大号泣していた。
(俺のせいで海と蒼が死んだ。
俺も死なないと…)
星亜は色んな方法で死のうとした。
首吊りをしようとしたら両親に見つかり精神科に入れられ、退院後ODで死のうとしても上手く死ねなくて、僕らの死んだあの横断歩道で死のうとして飛び込んでも、手術で一命を取りとめてしまった。
その後どんな方法をしても、星亜は死ぬ事が出来なかった。
「はぁ、やっと死ねる…。」
星亜は、迷った挙句学校の屋上から飛び降りることにした。
「ちょっと君…!?」
星亜を引き止めたのは、僕によく似た男の人だった。
「え、あ…あおい……?いきてたの…あおいっ、あおい!」
幻覚を見た星亜は涙を流した。僕が死んでから彼に生きる意味なんてなかった。そんな星亜の目に光が見えた。
「ごめん。僕は蒼という人ではないんだ。
僕は空。」
「そっか…、」
星亜は空と出会って、必ずといっていいほど僕達が死んだあの道を避けるようになった。それに、自分から何かを提案することも無くなった。
ある帰り道、話すことがなくなった彼らに沈黙が流れる。これはよくある事で、別に気まづいと感じるものではなかった。
ここまで仲良くなって空に隠してきたこと、それは言うまでもなかった。
今まで怖くて隠してきたけれど、自分に忘れさせないため、空ともっと分かり合える為にもいつかは言おうと思っていたこと。
そして星亜は言う。
「僕は人を殺したんだ。それも、2人。」
空にどんな反応をされるのか、怖くて仕方なくて。
ずっと下を向いていた星亜が顔を上げる。
そこには唖然とし立ち止まっている空がいた。
__キキィィイ___ッドン_______
それはまるで、無限ループかのように。
死にたい君が今日も生きてる話 蒼雪 @01sosetushirahashi
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