第3話

「海!おはよー!」


「おはよう星亜。今日は遅刻しなかったんだね?笑」


「もー、人のことバカにすんなよ!

そういう海だっていつもはギリギリのくせに!」


「僕はギリギリであって、遅刻はしないんだ。

星亜とは全く違うよ。」


「ふーん!」



「海!一緒に帰ろ!」


「うん。今日は寒いね。」


「そうだなー、雪積もってるし今日は別のルートで帰らねー?」


「えー、やだよ。早く帰ってあったまろうよ。」


「おねがい!ちょっとだけ!ね?」


「仕方ないなー。」


「俺、海のことめっちゃ好きだわ!」


「あー、うん。」





「じゃあ、あそこの公園までどっちが早いか競走な!」


「えー、めんどくさ」


「じゃあ行くぞ!よーい、ドン!」


横断歩道の両サイドは雪が積もっていて車が見えなかった。ただ、そこの道は滅多に車が通らないからという理由で、俺は何も確認せず走った。



「星亜!危ない!!」



背中から押された。

そして、太いドンッという音。後ろを振り返ると、真っ白な雪が赤く染って、その状況を俺は受け入れることが出来なかった。



「え、海…?かい!起きて!おきてよ!!」



運転手が急いで救急車と警察を呼び、

海と俺は救急車に乗った。

海は何度呼んでも起きなくて、冷たかった。



病院について、海の死亡が確認された。

そしてお葬式で、俺は海が死んだことを理解した。

泣きながら海のお母さんに土下座してるおれのママ。泣きながら

「もう土下座はやめてください…」

とおれのママに言ってる海のお母さん。





「俺のせいで海が死んだ。

俺があの時、違う道で帰らなければ、競走なんて提案しなければ、車が来てないかしっかり確認しておけば…海は生きていたかもしれない。いや、生きていたんだ。

俺はそれから、もちろん今も反省してる。

出来るなら海の両親にも死んで詫びたい。

それで死んだ後、また海に会って謝りたい。


これが、俺の全部だよ。


俺は人を殺したんだ。それでその殺した人を蒼と重ねた。俺はいつか、蒼のことも殺してしまうかもしれない。そんなことを考えると夜も眠れないんだ。だから…もう……」



「…星亜。全部話してくれてありがとう。

僕は海くんではないし、それに星亜の全部を理解してる訳でもない。だけど、"死にたい"なんてもう思わないで欲しい。」



「…は?……こんなこと言いたくないけど、蒼にこの気持ちは分からないよ。」



海は学校を飛び出して、道路に飛び込んだ。

間に合わなかった。


まただ。また僕のせいで星亜が入院してる。

手術で一命は取り留めたものの、星亜は目を覚まさない。

今日も僕は、星亜のベッドの横に座っている。



「おい、いい加減、目覚ませよ。」



いつも通り話しかけてみたけど、星亜は目を覚まさなかった。

そして翌日。また翌日。


"星亜が目を覚ました"


と星亜のお母さんから連絡がきた。もちろん走って向かおうとした。

だが、星亜が僕に会いたくないらしい。



____



秋が始まり、星亜が学校に来ない生活にも少しずつ慣れていった。


(僕は会いたいけど、星亜が僕に会いたくないんだから仕方ない。)


そう自分に言い聞かせて、今日も登校する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る