第2話

「"自殺と"死にたい"は、違うのか?」



ここでぼくは、初めて聞いた。何となく触れてはいけないって思ってたから。



「……違うよ。全然違う。」


「そう。僕には理解出来ないけど、今後気をつけろよ。」


「やっぱり俺、蒼のこと大好きだわ」


「やめてよ気色悪い。」


次の日星亜は退院した。

検査をしても特に問題なかったが、しばらく安静にするように言われたらしい。


そのときから僕は、星亜の"死にたい"を疑わなくなった。本当に消えてしまいそうだったから。

あんな気持ち、もう感じたくなかったから。




「蒼、おはよう。」



圧倒的遅刻魔。HRが始まっているのに堂々と入ってくんなと思いつつ、僕は挨拶を返す。



「あぁ、おはよう。」



「星亜、後で職員室来いよー」


「はーい」



ちなみにこいつの第一印象は

"絶対に関わりたくない" だった。

いつ道を踏み外してこんなことになってしまったのか…。自分でも頭を抱えるほどだよほんと。



「あおいー、後でってことはいつでもいいんだよね?」


「­­何考えてるんだよ…早く職員室行ってきなよ。」



星亜が戻ってきたのは30分後。かなり怒られたんだろうな…。


「はぁ、死にたい」


下校中また口にした。



「おまえ、いつになったらその口癖やめるんだよ…」


「うーん、どうだろうね?」


「どうなんだろうねって…はぁ、」


「俺、誰にも言ってなかったし、言うつもりもなかったんだけど。結構前に親友が死んだんだよね。」


「……え?」



思考が停止した。こいつにそんな過去があったなんて全く知らなかった。それに、"死にたい"に意味なんてないと思ってたから…。



「まぁ、こんな話はおいといてー、課題やった?」


「こんな話っておまえ…いや、なんでもない。

課題?当たり前。明日提出だよ?」



星亜が話題を変えるということは、それについて触れてほしくないってこと。僕はそう解釈した。



「あおい、やっぱり好きだわ」


「あー、うん」



いつもは気持ち悪いとか言ってたからか、

一瞬、星亜の表情がこわばっている気がした。



夜、星亜のお母さんが家に来た。

何かあったのか聞くと、最近家での星亜が情緒不安定らしい。心当たりはあるそうだ。



「どういうのが理由なんですか?

やっぱり…事故……?」



「それもあると思うけど、違うことの方が大きいと思うの…。」



「それはどういう……?」



「星亜から聞いてないと思うんだけど、昔星亜の親友の海くんって子が

"星亜を庇って亡くなってしまったの。"」



「え………」



「それで、蒼くんがその海くんに少し似ているのよ。それで、重ねてしまってるみたい。」



「そうなんですか…、」



「だから蒼くん、学校とかで星亜の調子が悪そうだっら保健室に連れて行ってあげてほしいの。」



「もちろんです。その辺は心配しなくても、僕が星亜を守ります。」



「ありがとう蒼くん…。心強いわ……」



星亜のお母さんは泣きそうになっていた。海くんは僕みたいな感じの人だったんだな…。なんて考えしまう。




翌日


「蒼、おはよう」


「おはよう星亜。今日は遅刻しなかったんだね?」


僕がそう言うと、星亜は様子がおかしくなって倒れ込んでしまった。

僕は急いで抱き上げて、保健室まで走って連れていった。もちろん星亜が起きるまで傍に居た。



「あ、星亜、起きた?」


「あおい…」


「調子はどう?大丈夫?」


「うん、大丈夫。蒼ありがとう。

あと……話したいことがある。」


「うん、なに?」




これから海くんの話をすると思うと心が痛くなった。

大好きだった親友が亡くなって、それを思い出して話すなど辛いに決まってる。



「……前、親友が亡くなったって言ったよね。」

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