死にたい君が今日も生きてる話

蒼雪

第1話

「はぁ、死にたい。」


聞きなれた言葉。


「はいはい。」


僕は今日も適当にその話題を流す。


"死にたい" これは君の口癖だ。

息をするかのように言うその言葉。僕は本当にそんなこと思ってるのか?なんて思ったのははじめの頃だけだった。


彼と出会ってはじめての夏のある日。今日も僕は君と一緒にいて、また君は、死にたいって言った。


死なない癖にいつも言ってくるその言葉がうざったくて、1週間連絡を無視した。

僕の予想はメンヘラみたいに死にたいっていっぱい送ってくること。



「ねぇあおい、今日会えないか?」

「あおい、もしかして忙しいのか?」

「今日は会えないんだね」


「おはようあおい。今日は会える?」

「あー…会えないのか?」

「確かにお盆だもんな。忙しい時に悪かったよ。ごめんなあおい。」

「おやすみ、あおい」


「あおい、もしかして何かあったのか?」

「あおいが死んだら、俺どうしたらいい?俺も死んだらいいか?」

「そんなに忙しいのか?」

「まぁ、誰にでも忙しい時はあるよな。じゃあ、また今度。」


____



3日経つと、あいつからの連絡はなくなった。

だが、あいつの母親から連絡があった。




「もしもし、蒼くん?星亜がね__」



「星亜がね…事故にあったの。」




__星亜のお母さんの震えた声。きっと、僕に電話をくれるまで泣いていたんだろう。




僕は猛ダッシュで病院へ向かった。


なかなか来ない場所で、ましてや病棟なんておじいちゃんのお見舞い以外で来たことがない。



星亜のいる部屋の番号を教えてもらい、個室のドアを前にした。


「蒼です。失礼します。」


僕はドアをゆっくりと開いた。



「蒼くん…急に電話してごめんね。星亜は蒼くんのこと大好きだから、1番に蒼くんに知らせないとって思って。わざわざ来てくれるなんて……星亜は幸せものね…蒼くん、本当にありがとう…。」



「いえ。教えて下さりありがとうございます。月ちゃん(星亜の妹)のお迎えの時間ですよね。僕、まだここにいるので…」



「蒼くん、ありがとう。月のこと迎えに行ってくるから、星亜のことお願いね。」



「もちろんです。」



星亜のお母さんが病室を後にした。


僕は、僕が星亜からの連絡を無視したからわざと事故にあったんじゃないか、星亜がこんなことになったのは僕のせいなんじゃないか?って。

自分ばかりせめて、そんなことより星亜が意識を取り戻すか心配で、このまま消えてしまったらどうしようって。色んな感情が込み上げてきて、涙が止まらなくなった。



「星亜、ぼくが悪かった…おねがいだから目を覚まして…」



そこから数分して僕は、手で押えていた目を開いた。そこには、目を薄くして笑っている星亜がいた。



「おまえ……」



ぼろぼろと落ちていた涙がすっと引っ込んだ。

怒りを抑えながらナースコールを押した。



星亜のお母さんもきて、僕は明日会いに来ることにした。




翌日、僕はまた病室の前にいる。



「蒼です。失礼します。」


「あおい、なんだか久しぶりだね?」


「ばか、昨日もあっただろ。

ていうかおまえ、わざと事故にあったんじゃないだろうな?」


「何言ってるんだよ。蒼が"3日"連絡を返さなかったくらいで、自殺しようだなんて思わないよ。

ただ、"3日間"ずっと死にたいとは思ってたけどね。」


「あぁ、それは悪かったよ。」

随分3日を強調してくる星亜に、僕は呆れた。


そして、気になったことを問う。



「"自殺"と"死にたい"は、違うのか?」


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