ネタのような婚姻届け。

 「酒!酒!酒!!!」

 センリの言葉は段々と大きく––俺らの結婚式を祝うかのように盛り上がっていく。

 実際に結婚するわけではないんだけど……なんだ?この気持ち。

 「た、大真? 大丈夫か?」

 「……」

 ゼク〇ィの本を渡した格好のままで固まっている大真に俺は問いかけるが……何も返事はない。ただの屍のようだ。

 って、そんな冗談言ってる場合じゃない。

 「お、おい!なんだこれ!!」

 「え?」

 「センリっていつも唯我独尊っていうか……昔のラノベの主人公みたいだよなぁ!?」

 「あぁ~、ハルヒ? ってことは、空君はキョンだね!」

 「……おい、俺は冗談言ってるわけじゃないんだぞ?」

 「そうなの?」

 「……こんな配信して炎上するだろ? 普通。 それに、結婚ってなんだし」

 「空君に言われたくないよ~! それに、許可取ってるもん!」

 「は?誰にだよ」

 センリは野球とかで優勝した時のような大きなタルをいつの間にかスタジオ内に設置しており––鈴さんと一緒に割ろうとしている。

 「ほら!そこの固まっている子!!」

 「……は?」

 「大真ちゃんが言ってたに決まってるじゃん!」

 「いやいや、ないでしょ?」

 「言ってたの!」「言ってましたよ」

 鈴さんからも言われる……あれ?これは本当なの?

 俺は慌てて大真の方に目をやる––まだ屍のようだ。


 「……ま、アーカイブとかみて! 切り抜き職人さーん、この子に動画をオナシャーッス!わー!!!」

 俺と大真が固まっている中、センリと鈴さんはリスナーには見えないタルを割り––酒を浴びた。


 ◇ ◇


 あの配信があって、一日が経過した。

 配信も途中から酷い有様となり––関係者の方から強制的に終了させられたと聞いた時には……この事務所大丈夫かと思った。

 しかし、それが何故か大うけだったようで……今見ている動画ランキングには配信と切り抜き動画の俺らが総なめしていた。

 「……結婚ねぇ」

 「ごめんね」

 俺と大真は朝食を食べ終え、今はコーヒーを飲みつつ昨日の配信を聞き返していた。

 そして、問題のシーンの場面を見て納得もした。

 

 事の顛末はこうだ。

 俺がシャワーを浴びている間に再度吹雪さんと通話をし––大真が今まで吹雪さんや千里(センリ)に対して“空さんと一緒にいたい”という趣旨の発言をして……まあ、こんな形になったってことだった。

 ……すげぇ、ネット社会。

 ポンポンと進み、ネタに昇華させる……これが配信業界なのか?

 「ま、まあ……今までの生活と何ら変わりないもんだから」

 「そ、そうだね」

 少しだけ変な空気が流れている中、俺らは再度コーヒーに口を付けた。


 ちなみにだが、あのゼク〇ィの付録には婚姻届けが入っていることがある。

 某有名キャラだったりもするもんだから、結婚しない方でも買う……そして、転売するという流れとかもあるようなんだが。

 俺らの家には––互いの本名等を記載した婚姻届けが置いている。

 ……好きなんだからしょうがないよな?

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女装Vtuberは(元)友人と喧嘩を売る。そして、炎上する いぬ丸 @inumaru23

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