【クレイジーコメディ】三歩行《ゆ》けば不倫

10・衝撃の事実発覚?!

　俺はYOASOBIから名前を【全知全能の神】に変えた。

　いや別に、俺は神だ。類友イベントを制覇したぜ、ベイベーという意味ではない。

　前回のことで懲りた俺は、まず法則を知ろうと思ったわけだ。

　冴えてる俺！

（相変わらず、自画自賛だな）　

　自分を全知全能の神だと豪語するのは医者に多いはずだ。

　なにせ、命を救えるのは医者しかいない……はず！

　名前と職業の繋がりが分かれば、予想がつけられるに違いない。

（君の予想が当たったことは、かつて一度もないがな！）

　前回の俺はコスプレイヤーと不倫して人は見かけによらないということを学んだ。

（歌が上手かった件か？）

　しかし！　今回の俺は探りを入れるんだ。

　これで三フリの法則を理解し、Fカップを手に入れる！

（そうは問屋が卸さない！）

　全てを把握し、全知全能の神となるのだ！

　これでＦカップ美女も俺の虜に違いない。

（お前は正気か?!）

　少し未来の自分を想像してみる。

『きゃっ！　あなたって全知全能の神なのね♡　わたしのことお嫁さんにして♡』

（日本では重婚は法律で禁止されています）

『ああ♡　Fカップ。君は俺の嫁』

（不倫すごろくじゃなかったか？）

「あああああ！　最高death！」

（死んどるがな）

　時刻を確認する。２時。

　全知全能の神はどんな時間でも全知全能の神だ！

（何をいってるんだ、お主は）

　俺は仲間と楽しくお医者さんごっこをする妄想をしながら、すごろくの箱を開けた。前回の場所に転生され、ずっと同じところであることに気づく。

（いい加減進もうや！）

───２時。今宵も俺は三歩行（ゆ）く。

『ようこそ全知全能の神、三歩の世界へ』

　カモン！医者たちよ。

　そしてできればナイスバディな女医さんよ！

　今日こそ俺は三フリ界の神となる！

（どうするんだ、そんなものになって）

　前を見る。

　おお……おう？

　いやいや、医者は白衣と決まったわけじゃないし。

　うん、きっと私服だって着る。

　後ろを見る。

　相変わらず、おとんが居る。

　固定なのか？

　右を見た。

　誰か近づいてくる。

　そのカッコは……ゴスロリってやつか？

　ま、まあ？　ゴスロリ好きの女医だっているはずだし。

　左を見た。

　え？　えっと。

　学ラン？　まあコスプレ好きの医者もいるだろう。

　三方から人が歩いてくる。

「ええ、そうですわね」

　一人は何やら腕に向かってしゃべっている。

「あなたですの？　わたくしを呼んだのは」

　一人は頭上で何やら棒のようなものを回転させている。

「俺が神だ。俺の強さを見せてやる」

　学生服の男は両手をポケットに入れて。　

『全知全能の神、類友イベント発生中！　全知全能の神、エンカウント成功！　全知全能の神、おめでとう！　これより朝までうっふん♡　厨二病不倫に移行します！』

　え？　今、なんて？

　どうやら俺はとんでもない者たちと遭遇したのだった。

　Fカップ不倫を目論見（もくろみ）、その目的に向かってひた歩くのはある意味厨二病とも言えなくはないが、彼らの言っていることはもはや人間の言葉とは思えなかった。

　厨二病とはいわば行き過ぎたナルシズム。

　謎の背伸びによって、良いのか悪いのか分からずに良いと思い込むのもまた厨二病。人は厨二病から生まれ、厨二病に死すといっても過言ではな……。

（すでに何を言ってのか謎だ）

　何故か厨二病たちと不倫することになった俺。

訳の分からない漢字の羅列に横文字のルビが振られ、それをカッコイイと悶絶する彼らを謎の生き物だと横目で眺めていた俺は、解散するなりモザイクチャンネルに直行した。

　もう俺の居場所はここしかない。

モザイク３：こんばんは！

モザイク１：よう、モザイク。

（安定のモザイク）

モザイク２：最近モザチャに入り浸ってないか？

モザイク３：俺のオアシス！

モザイク１：また何かあったのか？

（何もなかったことは一度もない）

モザイク２：いっそ名前をモザチャにしてみたら？

モザイク３：それはちょっと

モザイク２：贅沢だねえ

　そういう問題か……？

モザイク３：いろいろ試してみたんですが、なかなか法則が分かりませんね。

モザイク１：それはそうだろう。

（バレては困る！）

モザイク２：早くしないと上級コースに行かされるよ？

　新しい条件が開示される?!

モザイク１：そうそう、連続5回類友イベントが出ると上級コースだったね。

モザイク３：マジすか?!

モザイク１：そうそう。俺は回避しまくったけどな。

モザイク２：モザ１は回避しても禿と遭遇するから笑うよな。

（どういうこっちゃ）

モザイク１：俺は禿とのコンビネーションで前進する。どこまでもな。

モザイク２：なにトチ狂ったこといってんだ。

モザイク３：禿好きっすね。

モザイク１：好きではない。俺は愛されているんだ！

（禿に？）

モザイク２：そういや上級コースに行くと、ランダムで5マス進める時があるらしい。

モザイク３：なんすか！　そのハッピーな感じ。

（ちっとも進まないのに必要か？）

モザイク２：学校の前通る時はちょっと便利だよな。

モザイク１：モザ２は上級コースだったのかよ。

モザイク２：あれ？　言わなかった？

モザイク１：ひでえよ、10年の仲なのに！

　俺はモザチャの主たちが10年の付き合いなことを知り、とりあえず名前を変えることにしたのだった。