第4話

 幼馴染によって半ば強引に胸を揉まされた俺。


 よもやこのまま、思い残すことなく出血多量(鼻血)で死ぬのかと――


「おーい、ユウキ?」


「祐樹く~ん?」


 おっぱいの大きい美少女ふたりに顔を覗き込まれ、俺は意識を取り戻した。

 ハッとして思わず鼻をおさえるも、血はでていない。ギリギリセーフ。

 俺の沽券は守られた。


「……今の、夢?」


 尋ねると、メリィは頬を染めて否定する。


「現実だよ……多分」


「……多分?」


 言葉を濁したくなるくらい、メリィはメリィで照れているらしい。

 自分から、胸を触らせておいて。


 ……端的に言って、くそ可愛いな、おい。


「あのぉ~。いい感じにイチャついてるとこ申し訳ないんだけど。……で。何しに来たん?」


 茉莉さんのごもっともな質問に、メリィは、ぽつりと――


「……相談。ユウキが、『幼馴染モノ』ばっかり見るの……」


(!?)


 ちょっと、メリィちゃん!? なに言ってるの!?

 俺にとっては初対面な、あなたの従姉に対して、ひとの性癖を暴露しないで!?


「でもって、私のこと、『可愛い』って……」


 ちら、と伺うような上目遣いが~~! くそ可愛い。


「それってさぁ……あのさぁ……」


 もじもじと、妖精みたいな小さな声で言い淀むメリィ。

 細くて華奢な指先で、編み物でもするみたいに、もじもじ、もじもじと……

 色素の薄い髪の毛先を、ちょいちょい弄って……


 ――はい。はい、はい。

 俺の幼馴染は、世界で一番可愛いですっ!


 でもって、ここまでバレちらかしてて『その一言』が言えない俺はチキンですっ。


 じーっと、促されるような茉莉さんの視線に背を押され、俺は暴露した。


「――はい、そうです! 俺は、芽里のことが好きですっ! 大大大大大好きですっ……!」


 勇気をだして、一息に言い切った瞬間。メリィは瞳を大きく見開いて。

 茉莉さんは「ヒュ~♪」と口笛を吹いた。


 ああ、もう――完全にやられた。


 メリィは多分、この一言を、俺の口から言わせたくて、茉莉さんの家に来たんだ。

 茉莉さんがメリィの意図を知っていたのか、知らなかったのかは、わからない。

 でも、蓋をあければメリィの作戦は成功した。今はそれで十分だろう。


 メリィは、やりきったんだ。

 おっぱいを触らせるという強攻策に及んでまで――


 俺も俺で……やりきった。

 そして、メリィにこの想いを受け入れられなければ、俺の人生もお終い……


 ふい、と照れを隠すように。拒絶される恐怖から逃れるように視線を逸らす。


 するとメリィは、俺の耳元で――


「……私も。大大大大だ~いすきだよ。ユウキ♡」


「……!」


 にこ! と目が合う。

 最愛の幼馴染と――


 その笑顔に、俺の頭は真っ白になった。

 もちろん、メリィが可愛すぎたのもあるだろう。

 でも、今回はそうじゃない。


 そうじゃなくって……!


(え? うそ? これ……夢?)


 思わず頬をつねろうとする、俺の手を取って。

 メリィは笑った。


「今日から恋人同士だね、ユウキ♡」

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