第3話

 後日。

 AV界隈期待の新人柏崎マリィこと、本名、篠崎茉莉まりは、「のらえも~ん!」よろしく、「まり~ちゃ~ん!」の電話ひとつでアポがとれた。


 メリィと茉莉さんは昔馴染みの親戚同士とのことで、仲が良いらしいのだ。

 一昨年大学生になった茉莉さんが大学に通うのに上京してきて、余計に親交が深くなったらしい。


「で。今はAV女優でお小遣い稼いでるってわけ」


 茉莉さんの一人暮らししているアパートに遊びに行った俺達は、ソファで下着にTシャツ一枚姿で、ぐでーん、と横になる色白爆乳美女を前にして、床に鎮座していた。


 どこか畏怖すら感じるオーラを纏う茉莉さんが、俺を見下ろす。


「ほう。キミが、噂の祐樹ゆうきくんか」


 女王様っていうより、魔王様みたいな問いかけだ。


「なかなか男前じゃない」


「でしょっ!! ……じゃない。こほんっ。こちら、幼馴染のユウキくんです」


 紹介された俺は、レースのパンティが丸見えな美女を前にして、落ち着かない心地で答える。


「ど、どうも……幼馴染の祐樹です」


(俺、なんでここにいるんだ? てか、どうして誰も「ズボン履け」って突っ込まないの? AV女優って日常でも下着姿がデフォルトなの?)


「あたしの作品見てくれたんだってね。そんで『会いたい』と」


「あ。いや、『会いたい』とは言ってません。『すごいね』って言っただけで」


 訂正すると、茉莉さんはメリィに視線を向けて尋ねる。


「ファンじゃないじゃん」


「あっ。いや、それは言葉の綾というか。ユウキが『すごい』って言うから、会わせたら喜んでくれるかな~って……」


 たどたどしく説明するメリィに何を思ったのか。茉莉さんは「はは~ん!」と、どこか楽しそうに俺と肩組む。

 たぷん、と押し付けられるおっぱいの圧に、思考が半分どっかにいった。


「隅に置けないなぁ~、ユウキくん。キミは早めに、ウチの玄関に入った瞬間、処分しておくべきだった」


 処分!?


「じょ~うだんだよ! 冗談! で、何? キミは童貞? あたしが卒業させてあげようか? 遠慮するなよ~慣れてるし。今すればメリィちゃんの裸も見れるし、あたし的にはお得な提案なんだけど――」


「なんで!?」


 当たり前のようにメリィまで混ざる想定だしっ!?

 どうしていつの間に俺の貞操と、ついでにメリィの貞操まで狙われてんの!?

 この人ヤバイ!


「十五歳にはちとハードルが高かったかな? 今のオフレコで頼むよ~。茉莉さん捕まっちゃうからねぇ。とりあえず、胸でも揉んでみる?」


 はわわ、と赤面するしかない俺に、メリィは頬を膨らませて、俺の腕を引っ張った。


「だめーっ!」


「「……ッ!!」」


(子どもみたいなダダ、可愛いっ……!!)


 俺と茉莉さんが同時に悶絶する。


 一方でメリィは俺たちの声なき声に気づくわけもなく、頬を膨らませて俺の手を取った。


「ま、マリちゃんのを触るくらいなら、私のにしてっ……!」


「「……っ!?」」


「マリちゃんより大きくないけど、クラスで一番大きいもん! じ、自信あるよ!」


 ……声震えてるけど大丈夫? 強がってるのが丸わかりじゃん。かくいう俺も、唐突に胸を揉むように迫られて声も手も震えている。


(え……? いいの?)


 大大大大大好きな幼馴染の胸、揉んでいいの?


 蒼い瞳にうるうると決意を滲ませて、メリィの手が俺の手を掴む。

 その手が、徐々にメリィの胸元に引き寄せられていって……


「ふやんっ!?♡」


「わわわっ!?」


 ふにゅん、と柔らかい感触がして、俺たちは同時に声をあげた。


 それを見た茉莉さんは、「ウブか~~!? てぇてぇ~!」と。

 腹を抱えて笑いをこらえていたのだった。


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