第58話

「ただいま」

「おかえり」


 お母さんが帰ってきたようだ。わたしはテンと玄関へ向かう。


「エドワードくんと会ったから、連れてきたよ。」

「あら、意外とあっさり見つかったのね。」

「うん。覚醒のダンジョンの中で助けた人がエドワードくんだったの。」

「縁があったのね。」

「エドワードくん、好きな人にどうしても会いたいんだって。あまりにも必死だから、自分でお母さんたちに頼んでって言っちゃった。」

「そうなの。連れて行くのはいいのだけど、そのためにはあなた達全員が精霊魔法を身につけないと行けないのよ。」

「どうして?」

「ここ以外のエルフの街は精霊魔法を使えないと行けないようになっているからよ。」

「精霊魔法かあ。そんな簡単に身につくのかなあ。」



 話しながら応接室に向かう。

 お父さんとおじさんはギルドに素材を売ってから帰ってくるようだ。


「あなたがエドワードくん?わたしはこの子の母のアンナよ。」

「どうも。エドワードです。身分を隠しているので家名は名乗らずにいたいがよろしいでしょうか?」

「ええ。わたしもただのエドワードくんとして扱うわ。」


 お母さんがソファに腰掛ける。アルが立ち上がり、私とテンの方へきた。お母さんとエドワードが話しているのを聞きながら、テンのブラッシングをする。アルは剣の手入れをするようだ。


「セバスからあなたを連れて帰ってきてくれという依頼なのだけど…。」

「はい。アルとリアから聞きました。でも、私はセレーナに会いに行きたいのです。どうか、協力してくれませんか?」

「そうね……。一緒に行ってもいいのだ。けれど、あの子達の夏休みの間だけしか協力できないの。」

「あと、どれくらいありますか?」

「あと半月程度ね。」

「そうですか。私はまだ精霊魔法を発現していません。アルとリアもですよね。あと半月で精霊魔法を発現して、セレーナのところにいくことは可能でしょうか?」

「そうね。ギリギリだと思うわ。会えても一日で引き返さないといけないぐらい。それでもいい?」

「はい。お願いする。」

「それなら、二人と一緒にお話しましょうか。リア、アル、こっちへ来なさい。」


 わたしたちはお母さんに呼ばれてソファに腰掛ける。


「あなたたち、エドワードくんと一緒に覚醒のダンジョンに行って精霊魔法を発現できるようにしてもらいたいのだけど、お願いできるかしら?」

「私からもよろしくお願いする。」


 わたしとアルは顔を見合わせる。

「覚醒のダンジョンに行くのはいいけど、精霊魔法ってそんなにすぐ発現できるものなの?」

「学校は?」

「もちろん、学校に間に合うようによ。あなたたちの学校に間に合う間に精霊魔法が発現できなかった場合は諦めて帰ります。エドワードくんもそれでいいわね?」

「ああ。」

「エドワードくんはこっちに一緒に泊まる?」

「いいえ。そこまでお世話になるわけにはいかないので。明日から朝にこちらに迎えに来ます。」

「わかったわ。」

「それでは失礼します。他の方々にもよろしくお伝えください。」


 そう言って、エドワードくんは帰っていった。

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魔物つかいリア、愛犬(使い魔)とダンジョンを巡る 美緒 @m103o

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