第57話

 宿に帰ってきた。でも大人たちはまだ帰ってきていないようだ。とりあえずエドワードを応接室に案内した。


「どうぞ。」

「ありがとう。」


 エドワードにお茶を出し、エドワードの正面にアルと並んでソファに腰掛ける。お茶がキッチンにおいてあった世界樹リーフの紅茶だ。世界樹の実の香りがしておいしい。お茶の香りを楽しみながら飲んでいるとエドワードが居心地悪そうにお茶を飲んでいるのが目に入った。かと言って話すことも特にないので、テンを膝に乗せ肉球の手入れを始める。アルも鞄から本を取り出し読み始めた。


「あ、アルその本、次読ませて。」

「おう」


 アルの読んでいる本の題名ー精霊魔法入門ーを見て、次に読むことを予約する。私も精霊魔法使ってみたいなあ。精霊魔法ってどんなのがあるのかな。


「おい。」


 気ままに過ごしているわたしたちにしびれを切らしたのか、エドワードが声を発した。


「なに?」

「いや・・・」

「なんか用か?」

「いや、用事はないんだけど。」

「うん?」

「なんかないのかよ?」

「何が?」

「いや、なんか聞くとか。」

「何を?」

「なんで一人なんだ?とか。」

「家出したからだろ?」

「いや、まあ、そうなんだけど……。なんか話さないか?」

「いいよ。」

「おう。」


 エドワードは私達と話したかったみたいだ。


「お前ら、普段何してるんだ?」

「普段?夏休み以外?学校行ってるよ。」

「え?学校?王立学園にいるのか?」

「え?初級学校だよ。」

「初級学校?初級学校って庶民が通うやつだろ?」

「だって庶民だもん。ね。」

「ああ。」

「そんな髪の色した庶民がいるかよ。」

「そう言われても……。現に初級学校に行ってるし。」

「その髪の色で?」

「あ、普段は魔法で染めてるの。」

「バレないのか?」

「魔法使い一族の子は普通に染めるよ?私の友達でもピンクブラウンにしてる子もいるし。」

「そういうもんなのか。」

「うん。」

「隠しなさいとは言われてるけどな。」

「ねー。」


 レオンの時も思ったけど、貴族の男の子は初級学校をあまり知らないみたいだ。レオンのことを知っているか聞いてみたいけど、聞いたらダメな気がしたのでやめておいた。


「王立学園ってどんな学校?」

「王立学園は貴族の総合学校みたいなもんだと思うぞ。宮廷魔法師や騎士になりたいものは、休学して、魔法学園や剣士の訓練学校に行ったりするんだ。」

「そうなんだ。」

「王立学園を卒業しないと貴族として認められないから、みんな絶対通うはずなんだ。事情のあるものは短期履修とかあるはずだけど。」


 王立学園は、幅広いことを学べるのでこの学校に通うだけで事足りるが、もっと専門的に学びたい人は休学してそれぞれの学校にいくらしい。普段は知らない貴族の話はとても面白かった。

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