最後の秘密
鏡にはウェディングドレスを着た自分の姿が写し出されているが、愛実は思わず見とれてしまった。
体が男の愛実でもフォトウェディングができる写真館を誠司さんが頑張って探してくれて、ドレスを持ち込みならOKというところが見つかったので、そこで写真を撮ってもらうことにした。
中古なら意外と安く買えたドレスを持ち込み、プロのメイクを始めてしてもらった自分の姿は、自分ではないみたいにキレイだった。自撮りしていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「準備できた?」
撮影用の衣装に着換えた誠司さんがメイク室を訪ねてきた。
「今終わったところ、美穂はどう?」
「まだかかるって。」
新郎と新婦2名という変則的なフォトウェディングも、多少のオプション料金を払うことで了解してもらった。
先に二人で撮影スタジオに行って、二人の写真を撮ってもらうことにした。職場には愛実の写真を見せているので、職場の中では誠司さんと愛実が結婚したことになっているので、職場の人たちに見せるための二人の写真を撮ってもらった。
二人の写真が撮り終わった頃、ドレスを着た美穂が撮影スタジオに入ってきた。
「ずるい、次は私と愛実ね。愛実のマーメイドライン似合ってるね。やっぱり私もマーメイドにすればよかったかな?」
「美穂のプリセスラインもかわいいよ。」
そう言ってウェディングドレス二人の写真撮影が始まった。
そのあと、誠司さんと美穂の両親に見せるための二人の写真をとり、最後に3人で写真を撮り始めた。
愛実を真ん中にして、右側に誠司さん、左に美穂と並んで3人で写真を撮られながら、愛実は幸せをかみしめていた。
男に生まれながら女として生きていくと決めた時、こんな自分を愛してくれる人がいるとは思わなかったが、愛してくれる人が二人もいて、しかも今後の人生を二人とも一緒に過ごせる。
年が明け、美穂が無事に出産を終え男の子を授かった。戸籍上は誠司さんの養子縁組に入っている愛実にとっては弟になる。
愛実は誠司さんと一緒に、美穂の赤ちゃんを見に行った。
「かわいいな。目は俺に似てるかな?」
誠司さんが赤ちゃんを抱きながら、愛実に聞いてきた。
「男の子だから、母親に似るから美穂似だよ。」
愛実は答えながら、美穂に似てもらわないと困ると思っていた。誠司さんには秘密だが、産まれてきた子は、愛実と美穂の間の子供だ。
愛実がホルモン治療を開始する前に冷凍保存しておいた精子をつかい人工授精で授かった命だ。美穂がどうしても愛実との間の子供が欲しいと言ったので、誠司さんには悪かったが人工授精することにした。
また一つ誠司さんには秘密のことができてしまった。幸せは秘密の上に築かれる。
秘密を持つ妻 葉っぱふみフミ @humihumi1234
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