新学期

「みなさん、夏休みは楽しめましたか?出欠を取りますよ」


 長身の女教師が一人ひとり名前を読み上げていく。


「あら、イツキ君!新学期初日から来てくれて嬉しいわ」


 呼ばれた男子生徒は、二学期からは真面目に来ますよ、と照れくさそうに言った。頭には大きく包帯が巻かれていた。


「見れば分かると思いますがイツキ君はこの夏休みに大きな怪我をしてしまったので、完治するまではみなさんも接触など気を付けてくださいね」


 全員の名前を読み終わり、教師は出席簿をパタンと閉じた。満面の笑みを作る。


「では二学期からも、私たちの星をより良くするために有意義な時間にしましょうね」 


 クラスの半数以上が頭の上に疑問符を浮かべた。イツキと呼ばれていた生徒が笑って言った。


「先生、『僕たちの学校』ですよ。『星』は壮大すぎますよ」


 笑いに包まれた教室では今日もいつもと変わらない時間が過ぎていくのだろう。

 学校はその繰り返しなのだから。

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エンカウント 伊吹 累 @Ento-Esam

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