2#40 逃げんなよ



「で、カズ。催眠アプリ持ってんだろ?ネタはあがってる。さっさと白状しろや」


「……持ってないよ」


「カーズー。俺がおまえの嘘を見抜けないと思ってるのか?」


「ぐぬ、ぐぬぬぬぬぬ……持ってるよ!なんだよ!持ってて悪いのかよ!」


「持ってて悪い。すぐにそれ消せ」


「ヤダよ!なんで消さなきゃなんないんだよ!これがアレばサツキでいつでも自由に遊べるのに!こんな美味しいもん消すわけないじゃん!」


「はぁ……そんなもん使わなくたって、いつも好き勝手してるだろ……カズ、今すぐに消すっていうなら今回の事は水に流してやってもいいんだが?」


「やぁぁぁだぁぁぁーーー!!!」


「コノヤロウ……おまえがその気ならこっちにだって考えがあるぞ」


「な、なんだよ……考えって……」


「カズが催眠アプリを使って俺にした事をそっくりそのままやり返してやる」


「ぜ、全部……?」


「どーせおまえの事だから、催眠アプリ使って言うこと聞くようになった俺の事を椅子にしたりとか、頭踏んだりとか、足舐めさせたりとかしたんだろ?それをやり返す!逃げられると思うなよ?やったこと白状するまで今日は逃がさねぇからな?覚悟しろよ!」


「や、ヤレるもんならヤッてみてよ!それでも僕は催眠アプリ消さないからね!ばーか!」


「上等だ!この糞ヤロウ!この期に及んで反抗的な態度とりやがって!絶対にそのままそっくりやり返してやるからな!」


「ふ、ふんっ、だ!そんなこと言って途中で逃げないでよね!」


「俺が逃げるわけねぇだろ!」




◇◇◇




おぶったカズを自宅に強制連行。部屋の中に適当にカズをほおり出す「ふげっ」と潰れたカエルの様に床に潰れた。非難の声がカズから上がるが、それを無視して俺はシャワーに向かった。いい加減にゲロ臭いのを洗い流してすっきりしたい。髪から何まで念入りに洗った。


シャワーを終えて部屋に戻ると何故かカズは緊張した面持ちで正座をして待っていた。



「なんで正座?」


「なんとなく」



遂に反省する気になったのかと少しだけ考えたがカズに限ってそんなことはあるわけがない(あるわけない)。今までに感じた事がない違和感を覚える。


まぁ、いいか。カズの態度がおかしろうがおかしくなかろうが、やる事は変わらない。調子に乗ったアホはわからせる!



「さぁてカズぅ!テメェがやったこと洗いざらい白状してもらおうかっ!」




◇◇◇




「うげっ……!」



べちゃぁ。



「おいおいクソ雑魚。これじゃ椅子じゃなくて座布団だな!まぁ座布団みたいな胸だし丁度いいか!」



カズを四つん這いで椅子にして、その上に座るも。カズは秒で重さに耐えきれずに潰れた。



「コロス……サツキ……コロス……」



下からカズの怨嗟の呻き声が聞こえる。



俺はカズを締め上げ催眠アプリをどう使ったのかを聞き出す。俺にした事を洗いざらい白状させた。その内容を容赦なく実行していく。


椅子にしてその上に座り、土下座させて頭を踏みつけ、終いにゃ足まで舐めさせる等々。次から次へと出てくるカズの蛮行の数々。それを全て実行に移していく。恨みがましい目で俺を見上げるカズに被虐心が刺激されて行為はどんどんエスカレートしていった。



「カズオラァ!他には何やった!?さっさと全部ゲロっちまえや!さっき吐いたみたいになぁ!」


「……こ、これで全部だけど」


「嘘だな。カズわかりやすいなぁ。何度も言ってるけど俺がおまえのウソを見抜けないわけないだろ?まだ隠してることあんだろ?」



正座するカズの前に仁王立ちして見下ろす俺。そんな俺の視線から逃れようとカズは顔を逸らした。



「なぁカズ。さっさと楽になろうぜ?俺も鬼じゃないからおまえが俺にした事、全部やり終えたらそれでチャラにしてやるから。まぁ全部終わるまでは逃がさんけど」


「…………」


「今度ななんだ?まだやってない事はなんだ?ほらほらさっさとゲロっちまえや」


「…………ス…………」


「おん?声が小さくて何言ったか聞き取れなかったが?もっと大きな声で言えや」


「うぐっ……!」



小声でボソボソと呟いたカズ。俺は難聴系じゃないものの流石に今のは声が小さすぎて聞き取れなかった。再度、言うように促す。



そして、カズから飛び出した言葉は俺の思いもよらぬ内容であった。




「…………ックス」


「は……?今なんて?」


「…………セックス」


「うーん……なんかとんでもない単語が聞こえた気がしたが……聞き間違いか……?」


「セックス!」


「…………」


「だからセックスした!」



カズが発した予想外の単語に脳の処理が遅れ、ワンテンポおいてから俺は叫んだ。



「はぁぁあああ!?!!」


「した!サツキとセックスした!」


「おいまてカズ!マジで言ってんのかそれ!?」


「したったらしたの!催眠アプリ使って!サツキと!僕とで!セックス!した!」


「いやいやいやいや!?カズ!?その冗談は流石に笑えないんだがっ!?」


「冗談じゃない!した!セックスした!」


「……マジか」



顔を真っ赤にして俺の事を恨みがマシく睨みつけながらも、カズははっきりと宣言する。


セックス、した、と。


セックスってアレよな。男と女がするアレよな。性行為よな。麻沙美がよく口に出すアレよな。


それを俺と?カズが?した?



「シャワー浴びてくるっ!」



困惑する俺を他所にカズは勢いよく立ち上がり浴室の方に向かおうとする。



「あっ、おい!カズ!」


「す、するんでしょ!?」


「い、いや……それは……」


「さっきヤッた事は全部するって言った!」


「確かに言ったけど……」


「サツキ途中で逃げないって言った!」


「それも言ったけど……」


「逃げんなよ!」



そう捨て台詞を残してカズはシャワーを浴びに行った。




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