2#41 アホが散る



浴室から聞こえるシャワーの音が妙に大きく聞こえた。



カズの爆弾発言に俺の心は激しく揺さぶられ、頭がまともに働かない。


したのか?俺はカズとしたのか?あのカズと?俺が?わけがわからない。なんでどうしてこうなった?それで俺達はこれからするのか?俺と?カズが?今からするのか?どういう状況だ?いいのか?するのか?


頭の中がめちゃくちゃで考えが何一つまとまらない。激しく動揺しているのがわかる。


そして心臓が激しく脈打ってるのがわかる。


なんだ俺は興奮してるのか?



ガチャリ、と。部屋の扉が開いた。



そこには一糸まとわぬカズが居た。



「ばっ……!?お、おい!服着ろって!?」


「これからするんでしょ!だったら服着る必要無いじゃん!」



確かにこれからするというのなら、服を着る必要は無い。服を着てもどうせする為に脱ぐのだからもっともな話ではあるが、そういう問題じゃない。


全く無いとは思っていたが、男性のモノとは全く異なる膨らみを帯びた胸部。全体的に小柄ではあるが丸みを帯びてよく引き締まった肢体。そして下半身には男性にあるものが無い。否が応でもカズが『女』であることを意識させられた。


親友であるはずのカズのその姿から俺は目が逸らそうにも逸らせなかった。


意図せず頭で考える事とはまったくの別で、自然と下半身に熱が溜まっていく。


真っ赤な顔、風呂上がりでまだ火照って少し赤みを帯びた裸体、まだ湿っている髪が妙に色っぽい。色っぽい?カズが?


そんなカズは自身の裸体を一切隠そうとはせずに、1歩、また1歩と確かな足取りで俺の方にゆっくりと歩みを進めてくる。



「サツキも脱いでよ」


「か、カズ……?その……アレだ……ここは一旦落ち着いてな?話し合おう」


「なんで?」


「なんでって……おまえ……それはだな……えっーっと……そもそも!なんでカズは俺と……したんだ?」


「うっ……し、した理由……?そ、それは……あっ、ほらっ!しょ、未体験って恥ずいじゃんッ……!」


「は、はぁ……?」


「い、今どきの女子高生が、さ。未体験とかなんか恥ずくない?年齢イコール彼氏いない歴とか、なんかそれ僕がモテないみたいじゃん?」


「モテないだろ。なんだったら嫌われてるまである」


「そんなことないもん!モテるし!嫌われてないし!とにかく!恥ずかしかったの!それでさっさと捨てたかったの!それで手頃なのがサツキで、都合いいのがあったから、だからサツキで捨てたの!」



拗ねた様子で赤い顔をふいっと逸らすカズ。


カズのその発言が本心からなのか、それとも建前なのかは分からなかった。



「さ、サツキだって童貞とか恥ずいでしょ?」


「そ、それは、まぁ、恥ずかしくないこともないけど……」


「だよね!?だったら別にいいよね!どうせサツキだってモテないんだし、これからも彼女出来たりとかしないでしょ!このままいったら一生彼女も出来ないで童貞のまま、みんなに指を指されてバカにされて笑われながら死ぬんだから!サツキは僕にお礼を言うべきだよ!そんなサツキの童貞捨てさせてあげたんだからさ!」



自分で言うのもなんではあるが、俺がモテないという事には異議はある。なんかちょっと自分で言ってて恥ずかしいけど。なんせ最近、明確に俺に好意を示してくれる人が何人か居るのだから。


そして妥協の妥協の妥協の妥協の妥協をして、恥を捨て、プライドを捨て、尊厳を捨てて頼めば麻沙美あたりで秒で卒業出来るとも思う。こういう言い方とどうかと思うけど。


というか俺は恐らく童貞では無い(多分)


催眠アプリを使われてほぼ確信に近いレベルで誰かと致していると思われる。


俺自身いつ卒業したかの記憶は無いという稀にも見ない状況ではあるが……。


俺の初めての相手って誰なのだろうか?


もしかしたらカズだという可能性も否めない。流石に誰が何処で俺に催眠アプリを使ったのかまではわからない。


自分の預かり知らぬところで好き勝手にされていることに気持ち悪さを覚えないこともないが、それは今は置いておく。



もし、今からカズとするということは、それは俺にとってはある意味で初めての経験になる。



「もう!いいから脱いでよ!」


「あ、おいっ!こらっ……!」



(規制されたアホが調子に乗るシーン)



「んじゃ入れるわ」


「はぁ……!?おおおおおおい待てカズッッッ!?そんないきなりッ……!?」



(規制)



「いったぁぁぁぁァァァァアアアアアッッッッッ!!!!!」



(規制されたあまりの痛さに絶叫するシーン)










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