2#2 泥沼へ



至って普通の男子高校生の久保皐月です。


平凡な容姿、成績も平均よりやや上、運動そこそこの何処にでも居るような一般人です。


しかしながら自分の非凡な所を上げるとすると俺の周囲にはやたらと美少女達が集まっているという点が挙げられます。


クラスメイトの聖女様を始め、義妹に幼なじみ、生徒会長、後輩のヤンキー……あと委員会の後輩ちゃんも実は結構可愛いく、そんな子達に囲まれています。


あと親友が居ますがアレは美少女ではなくクソガキです。


正直、何故、俺の周りに集まってくるのか疑問は耐えませんが同好会の会長いわく「キミは平凡だが実にタチが悪い男だからだよ」などと言われた事がありますが、さっぱり意味がわかりません。何ホントそれどういうこと?


そんな美少女達が何故か我が家に集結し、お泊まり会が開催されました。


何言ってるか分からんとは思う。だが安心してくれ、俺もなんでそうなったのかまるで意味が分からなかった。


そして更に俺は後輩女子に対する脅迫及び強制わいせつの罪に問われ私刑を受ける事になった。


私刑の内容は日替わりでそれぞれの下僕として丸1日を過ごすという事に落ち着いた次第である。



だからホント何がどうしてこんなことになってるんだ!さっぱり意味が分からないって!



まぁ、今更どう喚いたってどうこうなる問題でも無くなってしまったので甘んじて自分の犯した罪を償う所存である。俺に罪を犯した自覚はこれっぽっちも無いのだけれども。



さて、本題はここからだ。


先の美少女達の事になるんだが、流石の俺でもここまで来れば薄々気がついている所がある。


彼女ら全員、俺の事を好きなのではないか?という所だ。


自惚れて自意識過剰になってる所は少しはあるだろうが。もはやそれは俺の中で確信に変わっている部分があった。



いやだって普通に考えて好きでも無い男の部屋に泊まったりなんかしなくない?しないよね?俺、間違ってないよね?


いくら他に人が居るからといって好きでも無い男の部屋になんか泊まるわけが無い。


となれば、やはりみんな俺の事を好きなんだろうなと勘違いしてもおかしくないと思うんだ。



複数人の女の子達がみんな俺の事を好き。


わーい!ハーレムだー!なんて手放しに喜べたら良かったんだが、残念ながら俺はそんなアホでは無かった。


というか毎日、毎日、みんなギスギスしてて胃が痛いから勘弁して欲しい。



俺はこれからどうしたらいいのか?



正直な話。みんなの事は好きだが、そこに恋愛感情があるかと言われれると、分からない。


なんか誰かの事を好きだった気がするのだが……よく思い出せないので、それはひとまず置いておく。


現状では俺に誰かと恋人同士になりたいとか、彼女を作りたいとかっていう気持ちは、無い。


青春真っ只中の男子高校生ではあるのだけれど不思議とそういった気持ちが湧いてはこなかった。


だから、もし彼女らに告白される事があっても、しっかり断るつもりでいる。


そして、その事をそれとなーく伝えようと思っている。


流石にね?告白もされてもいないのに「キミは俺の事好きだよね?でもごめんキミとは付き合えない」なんて勘違い野郎みたいな台詞を言えるか?言えないです!行動がイタすぎる。恥ずかしすぎる。


よし。今後の方針は決まった。


告白されたらしっかりと断る。そして、その旨をそれとなく相手に伝える。


これで行こう。




◇◇◇




「あの……皐月くん?もし、もしもの話なんですが……皐月くんは私以外の人から……告白、とかされたらどうしますか?」


「告白されたら、か……そうだな。その時はしっかりと断るよ。俺は誰とも(誰とも)付き合う気は無いから」


「あっ……はいっ……!やっぱり、そうですよね!そうなんですよね!皐月くんは(私以外の)誰とも付き合うつもりなんて無いですよね!」



えへへっ……やっぱり皐月くんの1番は私ですね!


その証拠に私以外に告白されてもしっかりと断ってくれるそうで。つまり二股ないしそれ以上をする気は無いと言うことです。


もう俺には君以外の何者もいらない。君さえ居ればそれでいいんだ、って感じですね!ああ、流石は皐月くんです!好き!



「せ、聖歌ちゃん、なんか嬉しそうだけど……どうしたの?」


「いえいえ!なんでも無いですよ!」



言いつつも私は気持ちが高ぶってしまって、思わず皐月くんの腕へと飛びついてしまいました。


その皐月くんの腕をギューッと抱きしめると皐月くんは困ったような表情をしつつも少し顔を赤らめました。



「あ、あの……聖歌ちゃん……これは?」


「……ダメですか?」



上目遣いで皐月くんを見つめると、ふいっと皐月くんに顔を背けられてしまいました。



「ダメでは……無いです……」



そっぽを向いて小声で答える皐月くんに私は思わず可愛いなんて思ってしまうのでした。





(ど、どうしてこうなった?なんで聖歌ちゃんは告白は断るし誰とも付き合わないと聞いて嬉しそうになる?というか胸!胸があててんのよ!(?)聖歌ちゃんの大きくたわわなたゆんたゆんが腕をムギューって!…………はぁ、幸せ…………もうどうでもいいかぁ…………)


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