第二章

2#1 ネタバレ



やぁやぁ、諸君。初めまして――では無いね。


改めまして、ボクの名前は花園はなぞの真理しんり


空想科学同好会の会長にして、今回の騒動の黒幕で元凶――そして、この催眠アプリの開発者さ。


ボクがどういう人物かと言うとだ。


まぁ、催眠アプリを自分で開発出来る程度の美少女だと思って貰えれば大丈夫だ。


さて今回ボクが何故この場に現れたのかと言うとだね。


キミたちにをしようと思ったからに他ならない。


ボクはね。小説などを読む時は必ず最後のページを最初に読むんだ。結末を知った状態で物語を楽しむ様にしている。


理解できないかい?


まぁ、大多数の人はそうだろう。それは理解している。


推理小説などで言えば最初から犯人がわかっている状態からスタートするんだ。そこに推理する楽しさや謎を読み解く面白さが無くなってしまうからね。普通では無いだろう。


しかしながら、答えを知っていた方が楽しめるというボクみたいな少数派も居るには居るのさ。



だから、ここから先の話をキミたちは聞いてもいいし、聞かなくてもいい。



全てはキミたち次第だよ。さて、キミはどうするんだい?



それでは本題に移ろうか。






◇◇◇






まずはこの催眠アプリだね。


このアプリを起動してスマホの画面を相手に見せる事で催眠状態になり、言葉のままに操ることが出来る。さらに催眠状態中の記憶は催眠が解除されると同時に失われる。


まぁ、薄々、勘づいてる人も居るとは思うが、この催眠アプリの本来の効果は別だ。


これは従来の催眠アプリに改良を加えたボクの特別性。そうだね。催眠アプリVer.2とでも言おうかな。


このアプリを使用する事で使用者と対象者の2人が催眠状態となり、その精神を同調させる。そこで2人だけの精神世界を形成するんだ。


まぁ、簡単に言ってしまうと2人で同じ夢を見る事が出来る催眠アプリというところかな。それがこのVer.2。


そして、その精神世界では催眠アプリを使用した使用者側に主導権があり。使用者の思考に基づいて事象が具現化される。


空を飛びたいと思えば空だって飛べるよ?


それに何より使用者の思うままに精神を同調させた対象者を思うままに操り、そして、自分にに出来るわけさ。全ては使用者側の思うがままだ。


少しは疑問に思わなかったのかい?思わなかったんだろうね。キミは自分に対して都合のいい言葉を並べてくれる想い人に舞い上がってしまって、深く考えはしなかった。そうだろ?


まるで夢の様な出来事に浮かれていたんだよ、キミは。まさか本当に夢の中だとも気が付かずにね。



え?騙したのかって?



何を言ってるんだい。騙してなんかないさ。


実際問題、ボクの言った通りになっただろ?


スマホの画面を見せたら相手は催眠状態になったし。


自分の言葉のままに操れたし。


催眠を解除すれば彼の記憶は消えていただろ?


ほら嘘は何も言ってないじゃないか?


まあ、そうなるようにボクが誘導したといえば、そうなのだけどね。


ボクがコレをそう説明したからこそ、多少、疑いはすれど、キミはコレがそういうものだと思って使った。


だからそういう結果が伴った。


そういうわけだ。


ちなみにだが、本来の仕様を知っていれば、そんな事にはならなかったよ。


あくまでこれは精神を同調させる目的で作ったものだからね。


キミが彼を催眠にかけたいと願ったからこそ彼は催眠にかかったようになったのさ。



ふむ。何でこんなことをしたかって?



そうだね。Ver.2のテストプレイがしたかったんだ。


元々、これはボクが彼に対して使うために作った物だ。


ボクの作ったものは完璧と言って差支えは無かった。だが、実際に使用した場合、何かしらの不具合が起こる可能性も否めない。


だからこそ、複数のサンプルが欲しかった。それで彼に対して好意を抱くキミらに目をつけたんだ。


キミらならば、誘惑に負けて彼に対してコレを使うと思ったからね。結果は案の定と言うべきかキミらは彼に対してコレを使った。


結果は上々。ボクの作ったVer.2は完璧だったといえる。そこに不具合は何一つなかった。キミらは等しく都合のいい夢を現実だと信じて疑わなかった。


その点だけ見れば被検体のキミらには感謝してもいいかな。どうもありがとう。



おいおい、やめてくれよ。それをボクに言うのかい?



催眠アプリを彼に使ったキミが?



他の者ならまだしも彼の意志を無視して催眠アプリを使ったキミらが、それを言う権利が何処にあるって言うんだい?


あるわけないだろ?自業自得じゃないかい?



まぁ、そうだね。サンプルが欲しかったと言うのに嘘は無いさ。


それとは別に彼に群がるキミらが鬱陶しかったという理由も無くはないよ。


だから、キミらを選んだ。


甘い甘い都合の良い夢を見せて、幸せに浸からせ、後戻り出来無くさせて、深い深い沼の底に引きずり込んで――……。



それでもって現実を知らしめて絶望の淵に叩き落としてやりたかった。



いい夢を見られたかい?



キミに対する彼の想いは、全部キミが抱いた都合のいい妄想だよ。



そうさ。そうだとも。最初から彼はキミの事なんて、なんとも思っちゃいない。



残念だったね。



そもそもの話。まず前提からして間違っているんだよ。



だって彼は最初からボクだけのモノだったんだから。




◇◇◇




ああ、ああ。知ってしまった。知ってしまったね?


知らなければもう少し楽しめる予定だったというのに。


非常に残念で他ならないよ。


この話はこれで終わりさ。




それでは続きを始めようか。


が堕ちていく様を存分に楽しんでいってくれたまえよ。




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