IS#2 久保涼花




「俺は皐月!これからよろしくな涼花!」



母の再婚が決まったのは私が小学一年生の時でした。


早くに父を亡くした私に新しい父親と義兄が出来ました。



幼い頃の私と言えば引っ込み思案で他人と仲良くするのがあまり上手くはありませんでした。


そんな私に突然出来た義兄。正直、見ず知らずの他人となんら変わりはありません。


初めの頃はそれはもう警戒して、距離を置き、まともに会話らしい会話もしませんでした。


そんな私に兄さんは無理に近寄ろうとはせず、徐々に徐々に距離を詰めてきました。



「おはよう涼花」


「おやすみ涼花」


「ただいま涼花」


「行ってらっしゃい涼花」


「一緒にゴハン食べない?」


「一緒に遊ばない?」


「一緒に学校行こう」


「一緒に帰ろう涼花」


「オヤツ涼花に半分あげるよ」


「これ欲しいの?いいよ涼花にあげる」


「ほらこれ涼花好きな奴だろ?」


「ん?一緒に寝るのか?いいよ」


「えっ!?一緒に風呂……?わかった。いいよ」


「なんだ手繋ぎたいのか?しょうがないな」


「待っててくれたのか。ありがとな」


「おー、よしよし。涼花はいいこだなー」


「これ涼花が作ったのか!凄いな!」


「おお、涼花は優秀だな!偉いぞー!」


「うん!涼花は自慢の妹だ!」


「流石は俺の涼花だ!兄ちゃんも嬉しいよ!」


「そうだな!涼花とはずっと一緒だ!」


「おう!俺も涼花の事は大好きだぞ!」




両親は共働きであまり家には居ませんでした。自然と私と兄さんは2人で一緒に居ることが多くて、気がつけば私は兄さんに心を開き、何をするにもいつも一緒でベッタリとくっついていました。


後ろをついてまわる私に兄さんは嫌な顔ひとつせず、むしろ嬉しそうに私の相手をしてくれます。


そりゃまぁ好きになってしまうというものです。


私は兄さんを兄として見ていたかと言うと、正直な話、出会った当初から兄としてはほとんど見ては居ませんでした。


一緒に住んでいる年上の男の子という感覚のほうが強かったのだと思います。


兄さんとは兄妹では無く、幼なじみだと思ってますよ。私は。だって兄さんとは血の繋がりがない赤の他人なんですから。


兄さんは私の事を妹として扱いますので、そこは少し兄さんに悪いなと思う事もありましたが、特に問題がある訳では無いので別にいいかという感覚。


何かと妹でいることの方が都合が良いことが多いので、そういう事にしている部分はあります。


妹だからと中学に上がるまでは寝る時もお風呂も一緒に入ってましたし。



「なぁ涼花……そろそろ1人で入れないか?」



困ったように私にそういう年頃の兄さん。この時ばかりは必殺の涙目上目遣いも効かず、中学からはお風呂は別に、添い寝もたまにになってしまいました。ぐすん。


それから高校生になると兄さんは一人暮らしを始めてしまいました。


この話をすると長いので省かせていただきますが、とりあえず、あの糞義父はいずれぶっ殺すとだけ言っておきます。


兄さんの家に転がり込み2人暮らしに持ち込みたい気持ちもありましたが、母を1人にする訳にも行かなかったので現状は通い妻のような事をしています。


ふふふ、通い妻。いい響きです。いずれは兄さんの本当の妻になる予定です。民法第734条で義理の兄妹は結婚できるとありますしね。


兄さん絶対に逃がしませんからね。




◇◇◇




ガチャリ。



「涼花……浴室に入る時はノックしろとあれほど……」


「あっ、すいません兄さん。兄さんが入ってるとも知らずにこれはうっかりしてましたー(棒)」



兄さんがお風呂に入ってる時を見計らって裸で突撃する私。



「とりあえず前を隠せ!」


「あ、はい」



慌てた様子で大事な部分を隠しながら後ろを向く兄さん。



「まさかとは思いますが、今更、兄さんは恥ずかしがってるのですか?小学生まではずっと一緒に入ってたじゃないですか」


「お互いにいろいろ成長したろ……」



ガチャリ。


私は浴室に入って扉を閉めた。



「あの、涼花さん?何故、出ていかずに扉を閉める?」


「まぁ折角なので久しぶりに一緒に入りましょう。兄さん背中流しますよ」


「何が折角なのかな!?」


「まあまあ兄妹なんですから。兄さんは妹に興奮したりなんかしないですよね?」


「いやまあそれはそうなんだけど……」



自分で言っといてなんですが、そう言われるとちょっとムッとしてしまいますね。



「これはテストですよ兄さん。兄さんが妹で興奮する変態かどうか確かめるテストです」


「なるほどテストかー。ちなみにそれ不合格だったら?」


「そうですね。兄さんには責任をとってもらいましょうか」


「責任、とは……?」


「ふふふ……なんでしょうかね?」


「怖いって!」



そうして私は無理矢理に押し切って兄さんとお風呂タイムです。2人で背中合わせで浴槽に浸かりました。私的には正面でもよかったのですが、それは頑なに拒否されました。



「いい湯加減ですね」


「そうだなー」



はぁ、兄さんが入ってるお湯に一緒に入る。兄さんが体全体に染み渡るようです。これもう実質性交のようなものでは?妊娠しませんかね?流石にしませんか。ガッカリですよ。



「兄さん興奮してます?」


「…………」


「沈黙、つまり興奮してるんですね?」


「し、してないからッ……!」



嘘ですね。これはちょっと興奮してます。間違いないです。


欲望のままに襲ってこないでしょうか?来ませんよね。兄さんですし。まったく兄さんはこんな美少女と一緒に入浴中だというのにとんだ糞ヘタレです。


まぁ、そんな兄さんが好きなんですけども。


とりあえず今は我慢しましょう。


ですがいずれは必ず既成事実を作ってやりますからね。覚悟していてくださいよ兄さん。







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