国民皆保険制度を大切に

 若いころ勤務していた田舎の病院には「注射っこ、一本打ってけねべが?」と外来で粘るお年寄りがいたものである。

 当然、ニンニク注射をしてくれる先生の人気は高く、注射が不要であることを時間をかけ説得する若い医者の評判はよくなかったことを思い出す。


 新型コロナの感染症法上の分類が5類に移行して人の動きが活発したこともあってか、季節外れのインフルエンザが流行している。

 抗インフルエンザ薬の代表「タミフル」の世界消費量を見ると、日本が約75%とダントツの1位らしい。


 最近、「タミフルには、インフルエンザ患者の入院を予防する効果はない」という論文が出た。(https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2805976)

 15本のランダム化比較試験(RCТ)を統合したメタアナリシスの結果が「プラセボと変わらない」というのである。


 カリフォルニア大学の津川友介準教授は語る。

「タミフルを処方しなくなったら、インフルエンザの検査件数が減り、(健康に悪影響なく)外来受診回数も減ることが期待されます。医療費削減効果があるだけでなく、医療機関の逼迫を減らし、医師の勤務時間も減る可能性があります」―。

 いつ頃から日本人の注射や薬好きが始まったのかは知らねど、国民皆保険制度と無関係なはずはあるまい。

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