第64話 雨あがり草取りせむと茗荷みつけ十四五本ぬきて妻に自慢す
「雨あがり草取りせむと茗荷みつけ十四五本ぬきて妻に自慢す」―。
庭ではほぼ毎日スギナ退治に精を出す妻。
「どうせ雪が積もったら枯れるのに…」という夫。
「でもそれじゃみっともないでしょう」という妻。
「ごもっとも」と頭は下がれど我が手は動かず。
◇
滝瓢水の俳句「浜までは海女も蓑着る時雨かな」を思い出した。
―これから海に入って仕事をする海女が(急に降り出した雨をさけるため)蓑を着て浜まで行く。どうせ海に入れば濡れるのだから蓑など着る必要はないのに、浜までは濡れずに行きたい―という海女の気持ちを詠んだもの。
「どうせ枯れるから」と怠けてはいけなかったのだ。
これをさらに「どうせ長くない命だからと捨てばちにならず天寿を全うせよ」とまで読むのは穿ちすぎだろうか。
◇
瓢水の俳句には、遊女を身請けするという知人に送った「手に取るなやはり野に置け蓮華草」がある。
また母の墓に詣でて詠んだ「さればとて石にふとんも着せられず」は、豪商の息子なのに一代で放蕩のため財産をなくしてしまった悔いが感じられる。
◇
さて(秋なのに草取りに精を出す)妻には、こんな一句を送ろう。
「スギナぬく妻の背中にアキアカネ」―。
(20221002)
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