第62話 なつかしき釜石の味とどきけり〈三陸おのや〉の冷凍パックで
「なつかしき釜石の味とどきけり〈三陸おのや〉の冷凍パックで」―。
三陸の御馳走が届いた。
20年ほど前に国立釜石療養所へ勤務したこともあり、食卓の話題は一気に釜石へとぶ。
◇
城下町とか門前町とかいうが、釜石は昔から製鉄所で成り立ってきた。
駅前に立ちならぶ不夜城からは絶えず蒸気と煙があがり、往時の賑わいをしのばせる。
山が海に迫る狭い平地のほとんどを釜石製鉄所の建物が占めており、崖の途中に追いやられた釜石市役所などは「釜石製鉄所の総務課」と揶揄されていたらしい。
今はどうか知らぬが、20年前も城下町の主は製鉄所の所長で、庭付きの立派なお屋敷に住んでいた。
それと比較すべくもないが、釜石療養所の副院長宅がひどすぎて、製鉄所の幹部クラス用住宅を探したことを思い出す。
◇
作家の井上ひさし氏が、若い頃に釜石療養所で働いていたらしい。
『面会時間闘争』によると、全国一律に午後三時から五時までと決まっていた面会時間を「超過勤務手当はいりません」と土地のニーズに合わせて午後五時から八時までに変えさせたそうだ。
…が、そんな公務員は今でも嫌われるだろう。
二年で辞めて上智大学へ戻った、とある。
型破りな副院長の思い出も蘇り、汗を拭く。
(20220930)
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