第58話 秋田からいちじくの甘露煮が届けられ妻は幼時の思ひ出を語る

「秋田からいちじくの甘露煮が届けられ妻は幼時の思ひ出を語る」―。


 妻の実家から兄嫁の作った甘露煮が届いた。


 いちじくを食べるたび妻から聞かされ、もう自分の子供の頃の思い出のようになった話だが…。

「まだ早いから」と母親に言われても、我慢ならず隠れて竹竿を振り回したらしい。


 おなじ団塊世代は、甘いものに飢えていた頃を思い出した。


    ◇


 特定の香りで関連する記憶や感情を呼び起こす現象は「プルースト効果」と呼ばれる。

 フランスの作家マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』で、主人公がマドレーヌを紅茶に浸したときの香りで幼少時代を思い出す場面があり、その描写が元になっているということかららしい。


 嗅覚は五感の中で唯一、嗅細胞と嗅球を介して(本能的な行動や喜怒哀楽などの感情を司る)大脳辺縁系に直接つながっており、情動と関連づけしやすいためと言われている。


    ◇


 20万年前に人類は誕生したらしい。


 飢餓に対応できた人間だけが生き延び、その〈飢餓遺伝子〉は一万世代も継代され、われわれ子孫が飽食の現代に〈生活悪習慣病〉として苦しむのも皮肉な運命である。

「三つ子の魂、百までも」というが、生まれる前から〈飢餓遺伝子〉を持っていたとは…。


(20220926)

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