第45話 白露の候に予期せぬ西瓜の五個生れり。縞みごとなれど径は五センチ

「白露の候に予期せぬ西瓜の五個生れり。縞みごとなれど径は五センチ」―。


 6月頃(物置を整理していて見つけた)古い種をプランターに植えた。


 双葉が出て、本葉が茂り、蔓が伸び始める。


 どうやら一昔前に「おいしい」と食べた西瓜の種だったらしい。


     ◇


 黄色い花が咲き、ミニチュアの西瓜となった。

「まだまだおがるはず…」と肥料をやり、実が傷まぬように古い簾を敷いたり、と手塩にかけて待った。


 …が既に白露の候。「最早これまで」と泣く泣く収穫した。


 見た目は、縞もくっきりと立派な〈縞王〉である。


     ◇


 半分に割ると、果肉部分は淡いピンク色で柔らかい種まであった。

「もったいないから」と妻は、皮をむき沖縄産の〈北谷の塩〉を振りかける。


 どんな姿で食卓に上ることだろう。


     ◇


 昔々、小児科の泉幸雄教授から「子どもは大人のミニチュアじゃない」と教わった。

 サイズが小さいだけではなく、機能的にも未熟で発達段階なのだと言う。


 医療に〈年齢差〉を考慮すれば当然であり、小児医療の対極にあるのが老年医療である。

「薬物有害事象が75歳以上の高齢者では60歳代までの二倍に増える」と教科書にある。


 …と、爺医の話の流れは「我田引水」となってしまった。


(20220913)

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