第41話 妻と対きベランダにて飲む珈琲よろし昔語りに虫の音添ひて

「妻と対(む)きベランダにて飲む珈琲よろし昔語りに虫の音(ね)添ひて」―。


 若いころはサイフォンを使ったが、最近はドリップ式である。


 ◇我が弘前は「珈琲の街」だと聞く。


 〈弘前は珈琲の街です委員会〉によると「藩士の珈琲」なるものがあるらしい。


 ―「1807年(文化4年)幕府の命で北方警備のため、弘前藩士が蝦夷地の宗谷岬周辺に赴いた。そこで多くの藩士は厳冬下、ビタミン不足のため浮腫病で亡くなった。(中略)1855年(安政2年)に再び藩士たちは蝦夷地の警備に赴き、このとき浮腫病の予防薬として珈琲の配給がされた」―と言う。


     ◇


 蘭学医の広川獬が記した『蘭療法』に基づいて再現したのが「藩士の珈琲」だそうな…。


 仕様書によると「黒くなるまでよく煎り、こまかくたらりと成迄つきくだき弐さじ程麻袋に入、熱き湯にて番茶の如き色にふり出し、土びんに入置、さめ候得ばよくあたため、砂糖を入用るべし」と、ドリップ式の原型らしい。


     ◇


 浮腫病なる不治の病の詳細は分からぬが、コーヒーのカフェインが利尿作用を促したのかも…と、勝手に想像する。


 コロナ禍が落ち着いたら是非、銀ブラならぬ土手ブラ(共に死語か?)の折でも試してみたい。


(20220909)

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