第32話 他人事と読みゆく『〆切本』の可笑しみに惹かれていつしか涙さそはるふ

「他人事(ひとごと)と読みゆく『〆切本』の可笑しみに惹かれていつしか涙さそはるふ」―。


 勤めを辞めてから、蒸し暑い日中はエアコンで除湿した書斎にこもりがち。


 これでは運動不足になってしまう、と考え出したのがバイクマシンを漕ぎながらの読書法。

 ―朝昼の食事後の運動療法にもなるが、いくら面白い本でも30分から1時間が限度。


     ◇


 最近は左右社編集部編『〆切本』の続編『〆切本2』にはまっている。


 こんなことを表沙汰にして大丈夫なのか、と心配になるほど生々しい作家と編集者とのやりとり。

 だが、作家でなくとも切羽詰まってどうしようもなくなると、人間なんて案外こんなことまで口走ってしまうのかも…と同情してしまう。


     ◇


 書くと言えば〈白い巨塔〉に棲息していた頃を思い出す。


 論文を書くたび別刷りも貰い、クリアファイルフォルダーに貯めた。


 業績集に別刷りを添えることが、当時は昇進の際の作法だったからである。


 単に論文の数を増やすだけなら、商業医学雑誌への寄稿が簡単だし原稿料も頂けた。


 逆に評価の高い学会雑誌では、査読という関門を通らなければならないし掲載料も請求される。


 それでも懲りずに「今度こそは!」と挑戦し続けた頃が懐かしい。


(20220831)

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