第31話 近隣の再開発の進みゆきこの年末には街うまるるか

「近隣の再開発の進みゆきこの年末には街うまるるか」―。


 我が家の一帯は、かつて亡き母の実家の畑だった。


 子どものころ、若い叔父叔母と一緒にスイカやマクワウリを割って食べたものだ。


     ◇


 そのリンゴ畑だが、津軽藩で最初の漆畑だったらしい。


『津軽デジタル風土記』によれば「津軽藩の漆栽培の技術指導書『漆木家傳書』の筆者の成田五右衛門は、代々漆栽培を手がけてきた成田家の五代目成田五右衛門惟宣と推定される」とある。


     ◇


 亡父の字で「成田家の先祖を探る」と縦書きされた原稿用紙。


 ―「幸吉翁の残した覚書をそのまま記述する」の後には漢字カナ交じり文が続く。

「先祖成田五郎右衛門宗全ハ現今ノ清水村部内樹木ト申ス処ニ家ヲ建テ、附近ヲ開墾シテ田畑ヲ耕シ、遂ニ一家ヲ為シタリ。(中略)尚、南部地方ニ在リシ時、漆樹の栽培法ヲ覚エ、且ツ利益ノアルヲ知レルニヨリ、之ヲ移植シテ範ヲ示シ、大イニ其の繁殖ヲ計リ、更ニ藩庁ニ上申シ、広ク諸人ニ栽培セシムルニ努力シタリ。実ニ我ガ津軽藩ニ於ケル漆樹栽培ノ嚆矢トス」と続く。


     ◇


 曾祖父の幸吉は私が10歳になるまで存命だった。


 どうやら、書くことが好きなのは血筋らしい。


(20220830)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る