第26話 酷暑さり涼風わたる我が庭は秋明菊さき処暑のさまなり

「酷暑さり涼風わたる我が庭は秋明菊さき処暑のさまなり」―。


 白と薄紫の花が咲く脇では、パーゴラにゴーヤーが数本ぶら下がっている。


 今年の夏は通勤がなく一日中Тシャツに短パンで過ごせたが、そろそろ朝夕は作務衣がありがたい。


     ◇


 勤務医として半世紀、一度も「一国一城の主になろう」とは考えず働いた。


 …が先月「医者人生の中締め」宣言をして以来、ホッとした日々のなか喪失感のようなものに気づく。


     ◇


 そんな折、外山滋比古氏の著書『知的な老い方』を読み『八十歳での起業』の項に目が留まる。


 冒頭「出版社をつくろうと思ったのは、あと二年で八十歳になるというときであった」というくだりに驚く。


 読みすすむうち「出版社をつくろう」が「理想の老人医療をやろう」に想えてしまう。

 期待感は膨れたが、結局「二年半、けっこうたのしい夢を見た。はかない夢であったが、老いの身に、不思議な力を与えられた」と、未遂に終わり自主出版へ転向したらしい。


     ◇


 私の「一国一城」は?


 実際に診療所を始めるのではなく(外山氏をまね)理想の老人医療を受けるための情報提供(自主出版)にしよう。


 自費出版で…と思ったが、無料のキンドル出版が年金生活者には分相応であろう。


(20220825)

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