第23話 牢固たる〈癌もどき説〉を唱へたる近藤誠氏は心不全にて急逝

「牢固たる〈癌もどき説〉を唱へたる近藤誠氏は心不全にて急逝」―。


 出勤途中でのことだったらしい。


     ◇


 第60回菊池寛賞を受けた近藤誠氏。


 授賞理由は「乳房温存療法のパイオニアとして、抗がん剤の毒性、拡大手術の危険性など、がん治療における先駆的な意見を、一般人にもわかりやすく発表し、啓蒙を続けてきた功績に対して」という。


     ◇


 近藤氏のセンセーショナルな言説、特に〈癌もどき〉説は、医療の世界から猛烈なバッシングを受けたものの(それが逆に評判となってか)ミリオンセラー作家になってしまう。


 その一方、有名人が(標準治療と言われる)手術や放射線・化学治療を受けずに亡くなったりすれば、テレビや週刊誌から引き合いに出されても来た。


     ◇


 癌治療に関わらず、医療とはデリケートなもの。


 一度の人生で「試してみてダメだったら別なのを選ぶ」というわけにはいかぬ。


 文字どおりの「命を懸けた選択を迫られる」ことになる。


 その結果のミリオンセラー、とは穿ちすぎか。


     ◇


 医学生だったころ「医者は自分の専門領域の病で死ぬ!」という都市伝説を先輩医師から聞かされ、産婦人科の入局を勧誘された。


 …というのは酒の席での話である。


(20220822)

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