第23話 牢固たる〈癌もどき説〉を唱へたる近藤誠氏は心不全にて急逝
「牢固たる〈癌もどき説〉を唱へたる近藤誠氏は心不全にて急逝」―。
出勤途中でのことだったらしい。
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第60回菊池寛賞を受けた近藤誠氏。
授賞理由は「乳房温存療法のパイオニアとして、抗がん剤の毒性、拡大手術の危険性など、がん治療における先駆的な意見を、一般人にもわかりやすく発表し、啓蒙を続けてきた功績に対して」という。
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近藤氏のセンセーショナルな言説、特に〈癌もどき〉説は、医療の世界から猛烈なバッシングを受けたものの(それが逆に評判となってか)ミリオンセラー作家になってしまう。
その一方、有名人が(標準治療と言われる)手術や放射線・化学治療を受けずに亡くなったりすれば、テレビや週刊誌から引き合いに出されても来た。
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癌治療に関わらず、医療とはデリケートなもの。
一度の人生で「試してみてダメだったら別なのを選ぶ」というわけにはいかぬ。
文字どおりの「命を懸けた選択を迫られる」ことになる。
その結果のミリオンセラー、とは穿ちすぎか。
◇
医学生だったころ「医者は自分の専門領域の病で死ぬ!」という都市伝説を先輩医師から聞かされ、産婦人科の入局を勧誘された。
…というのは酒の席での話である。
(20220822)
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