第22話 手水鉢の吾唯足知とふ文字は止まぬ豪雨にもじっと耐へをり
「手水鉢の吾唯足(るを)知(る)とふ文字は止まぬ豪雨にもじっと耐へをり」―。
玄関先の〈知足のつくばい〉に、今日も強い雨があたる。
龍安寺の手水鉢を真似たもので、真ん中の「口」を囲むように「吾唯足知」という四文字が刻まれている。
禅の教えらしいが、贅沢を戒める言葉と受け止めたい。
「無いものねだり」ではなく「有るものさがし」をだ。
これ以上の贅沢を望んだら…罰があたるというもの。
◇
勤務医を辞めて一月余、書斎に本棚を増やし整理も終わった。
前後2列型の本棚には約500冊の文庫と新書が並ぶ。
渡部昇一著『知的生活の方法』と『知的余生の方法』が目にとまった。
10年以上前に読んだもので、あちこちに引かれた黄色のマーカー線が懐かしい。
◇
渡部氏は「IТ機器や文明の利器は増えても、人間の思考や生きることの本質はそうそう変化してはいないと私は考えている。できるなら知的な生活を送りたい、という思いは人の根源的な欲求ではないだろうか」とおっしゃる。
◇
医学書を整理して見つけたものだが、間もなく「後期高齢者」と呼ばれる今こそ読み返す絶好のタイミングだ。
そして私流の〈知的余生〉を十分に楽しみたいものである。
―吾唯足知。
(20220821)
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