第10話 エアコンの吐く水ながめ感謝せり蒸す大気より絞りし技に

「エアコンの吐く水ながめ感謝せり蒸す大気より絞りし技に」―。


 お盆だというのに蒸し暑い!


 たまらず、去年の夏にエアコンを設置した書斎へ避難する。


 室外機の排水が屋根を流れ出し、一気にさわやかさを取り戻す。

「よし!」と気合を入れ、短歌〈一日一首〉を詠み、駄文〈一日一編〉にとりかかる。


     ◇


 しかし、目は本棚に向く。


 ―医師が「患者の人権を尊重する」のは時代遅れで世界の非常識(平岡諦)―


 なんともエキセントリックなタイトルだが、7年も前に読んだので内容は思い出せない。

 帯には赤文字で「日本医師会の”誤訳”に胡麻化されるな」と更に挑発的だ。


     ◇


 日本医師会が2000年4月に出した『医の倫理綱領』のことだろう。


 それが2022年7月の改定で「医療がこれまでの診断と治療・治癒はもとより、支える医療、緩和ケアをも包含するものへと大きく転換した点を、綱領の前文に明記いたしました」とされたが、本質的な部分は変わっていない。


     ◇


 平岡氏の論考は(何度か読み返しても)難解である。

 …が(氏の「誤訳」と指摘する)世界医師会の文書の日本語訳が重要なカギとなっている、のは確かだ。


 エアコンが効いている書斎で、医師脳(いしあたま)は沸騰する。


(20220809)

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