第9話 ねぷたの共津軽の夏は終りなり小雨そぼ降る今日は立秋

「ねぷたの共(むた)津軽の夏は終りなり小雨そぼ降る今日は立秋」――。


 常套句「津軽の短い夏」は終わっても、まだまだ日中は蒸し暑い。

「地球温暖化ストップ!」を叫ぶだけで20世紀は終わり、21世紀も既に22年だ。


     ◇


 1918年11月の悲劇。


 アラスカのブレビックミッション村で(150名ほどの住民のうち)72名もの命がわずか5日間で奪われた。


 犠牲となった人々は今でも白い大きな十字架の下の永久凍土に眠っている、という。


     ◇


 1997年8月、ヨハン・フルティンは〈スペイン風邪〉の原因究明のためブレビックミッションを訪れた。


 村民と一緒に墓地の凍土を掘り起こして四日目、30歳前後の女性「ルーシー」の遺体を発見。


 その肺の検体は、米軍病理学研究所のPCR検査で遺伝子解析される。

「1918年のパンデミックを引き起こしたインフルエンザウイルスの遺伝子情報の全容が解明された」――と、中屋敷均氏の講談社現代新書『ウイルスは生きている』はドラマチックだ。


     ◇


 地球温暖化は進む。


 何の手も打たぬまま無事に済むはずはない。


 それほど遠くない近未来、凍土に埋まる〈パンドラの箱〉が開くかもしれない。


(20220808)

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