第5話 雷ひかりとどろきわたる大太鼓。神々きそふねぷた囃子か

「雷ひかりとどろきわたる大太鼓。神々きそふねぷた囃子か」――。


 夢うつつで雷の音、閉じたマブタに稲妻を感じた。


 天の底が抜けたような雨音に、窓を開けて寝たことを思い出す。

 ……幸い、吹き込んではなかったので、窓を細くして二度寝した。


     ◇


 眠っていたのに雷光を感じたのは、光がマブタを透過したのだ。


 理科の教科書には「物体への入射光は〈反射・吸収・透過〉という三つの行先に分かれ、これらの間にはエネルギー保存の法則が成り立ちます」とある。


     ◇


 〈カーボンナノチューブ〉という物質を垂直に並べれば、光の吸収率が増し〈ベンタブラック〉になると聞く。

 通常の黒色塗料の光吸収率(95%程度)に対し、ベンタブラックは99.965%らしい。


 さらに〈究極の黒〉が完成したとの報もある。

「その吸収率は、99.995%だ」と言われても、違いは微妙すぎて素人にはよくわからない。


     ◇


 もし〈究極の黒〉を塗料にしたら、世の中は混乱するだろう。


 たとえばだが、自動車の塗装に使ったら……とか、丁字路の壁にトンネルの絵をかいたら……とか、ねぷたの太鼓を〈究極の黒〉で塗ったら……とか。


 ――夢だったのか。


(20220804)

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