第5話 社畜、覚醒す。


「な、なんだ!?」「!!?」


シロと見張りの騎士が驚く。そして、アーサーも。



黒崎の体からは禍々しい黒いオーラが立ち昇り、それが身を纏うように覆われ始める。

まるで漆黒のオーラによる鎧。



「...これは...いったい」


アーサーが驚愕の声を漏らしたその瞬間。



――メキッ



黒崎の拳がアーサーの顔面へと直撃し、鉄格子もろとも吹き飛んだ。





――な、何が起こった?


足元に落ちる破片...これは。


そうか...私は、殴られ...ガードさせられたのだ、あの無能力者に...!!


顔を触るとヘルムの右目部分が砕けていた。


(...これはS級レベルの攻撃魔法でも破壊できない特殊魔力コーティングを施してある...にもかかわらず!今の一撃、何という破壊力だ...!)


隣国との紛争でも、魔界探索でも、私の鎧に傷をつけられる者などいなかった。


...私がガードを強いられる程の...攻撃...だと!?


(いや、それ以前に...私が敵の攻撃を躱しきれないなど...何十年ぶりの事だ...)


視線を戻せば、またさらに漆黒の闇が大きくなり揺らめいていた。


(...禍々しい...こんなオーラを人が発し得るのか。魔力量も既に円卓の騎士と遜色ないレベルだ...こいつは、一体...)


「...お前は、なんなんだ」


私の問いに、奴が答える。


「ただの、社畜だ」


――!!


その瞬間、無能力者は側の壁を破壊。強化魔法を重ね、強固な物のはずの石壁を簡単に粉砕する奴を見て、妙な笑いが出た。


(さんざ化け物と呼ばれた私だが...コイツのほうが遥かに、化け物だ!!)


「逃さん!!」


空けた大穴から逃走するのだと、予測。腰の剣を抜き斬り伏せにかかる。


この国で最強の騎士、アーサー。その突きは神速というに相応しい、並の剣士では目視することも敵わないスピードだった。




が、しかし。その切っ先は黒崎を捉える事は無かった。


――ギギッ...ミシッ



「...!!?」


脇でこの戦いを観戦する、召喚師と騎士は目をまるまると見開き、言葉を発することもできない。

それはそうだろう。かくいう私も同じ心持ちだ。


「莫迦な...」


奴は私の突きを完全に見切り、刀身を左手で握りしめていた。


(...壁破壊はフェイクか!攻撃を誘われた?...なぜ)


アーサーはその答えをすぐに知ることとなる。


「...な!?」


その握られた刀身にヒビが入り始めた。そう、黒崎の狙いはその武器だった。

剣を破壊するため、わざと抜かせたのだ。


(...あ、あり得ん!!この剣には私のオーラが込められている!!その量は奴の手に纏うモノよりも多い!!なのになぜ...!?)


やがて剣が



バキィイインッ――!!



砕け散り、破壊された。

その刀身に移る漆黒のオーラをみたアーサーは、理解する。


オーラの質...か!


量では私が勝っているが、奴のオーラはおそらく他人のオーラを侵食し破壊する。


(...闇の、オーラ...!!)


あのオーラを纏った攻撃に防御は意味をなさない...。闇のオーラが即座にオーラを喰らい、魔力によるガードを無効化するからだ。


オーラを纏わない体で、オーラにより強化された攻撃を受ければ致命傷では済まない。



この無能力者は...


かつて経験したことのない危機感と恐怖感に、その心までもが震え上がる。

それは魔族の王や神族の王と対面した時を越える、プレッシャーだった。


――ゆらりとした足取りで近づいてくる、闇。



(こいつは...ここで全力で抑え込まねば、まずい...!!)




アーサーの体から光るオーラが噴き出し、純白の翼が出現した。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

世界最強の闇(病)みの社畜】異世界へと転移し最強の闇(病み)魔法が発現。〜俺の抱える闇が最強の魔法になるって本当ですか?心優しい社畜は破壊神と化し、闇の王となった~ カミトイチ@SSSランク〜書籍&漫画 @kamito1

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ