第15話

体育祭と文化祭が終わって残り時間は少なかった。

医者には運動のしすぎで寿命が短くなっているかもしれないと言われた。

最初よりは実感があってだけどその分この残された時間が大切に思えた。

そして僕はその日から体調を崩し始めた。

日に日に身体があんまり動かなくなる。

息が、あんまり出来なくなってきた。

学校も行けなくなっていた。

だけどクラスの人達は常に見舞いに来てくれた。

うれしかった。

だけど、紗絵さんに会えない日々が何故か無性に嫌だった。

だけどどうやら彼女も結構進行したそうだ。

彼女ももう学校に来ていないらしい。

これはもうじき死ぬかもしれないと思った。


「いやだなあ」

「あい、たいよ」


そこで初めて気がついた。

最初は軽い感じで付き合っていたのにいつしか彼女のことが頭から離れなくなった。

そう、僕は改めて彼女のこと、冬木紗絵さんのことを好きなことに気がついた。

僕は動き出した、時刻は夜でまだ夜はあけない。


「だから彼女のもとに」


僕は軽く私服に着替えてすぐに学校に向かった。

正門前の電信柱の下でゼイゼイと言っていた紗絵さんがいた。


「紗絵さん!!」

「は、るくん?」


彼女は倒れそうになる。

急いで走る。


「だ、大丈夫?!」

「うん、大丈夫」


僕は彼女を背負う。

頭で考える暇がもうなかった。


「ねえ春くん遊園地いこ」

「わかった行こう」


こうして僕らは遊園地に行った。

遊園地には人がたくさんいた。

カップルとかがたくさんいた。

パレードのある方に向かった。


「パレード綺麗ですね」

「うん、綺麗だね」


僕たちはパッと見ると色々な乗り物に乗った。

流石にジェットコースターには乗らなかった。

これで死んだら流石にいやだ。


だからメリーゴーランドとかコーヒーカップとかに乗った。

楽しかった。

今までよりも全然。


「あのごめん僕トイレ行ってくるからいてね」

「うんわかった」


僕はトイレに早歩きで行く。


「ブヘッ」


どうやら肺に血が貯まっているようだった。

これはもうほんとに時間がなさそうだ。


「戻ろう」


戻ってみると紗絵さんが何かドリンクを持っていた。

それを僕に渡してくる。


「これどうぞ」

「ありがとう」


僕らはしばらくベンチで休んでいた。


「大丈夫?」

「うん」


お互いかなり顔は引きつっていた。

どうやらお互いに長くなさそうだ。

だから僕は空元気でもいいから動いた。

覚悟を決めた。


「冬木紗絵さん、僕と結婚してくれませんか」


僕は一瞬自分でも何言っているのだろうと思った。

だけどもう時間がなかった。

今できる最高の笑顔で言った。

僕は膝を折って手を差し出した。


「お、お願いします」


こうして僕らの友情?愛情?が深まった。

僕たちは笑った。

笑って笑って笑いまくった。


「まだ周りますか?」

「うん」


こうして僕らは閉園ギリギリまでそこで遊んだ。

途中でコスプレしたりピアスを開けたところにピアスつけた。

初めての体験なんだか新鮮だった。


「これどう?」

「に、似合ってるよ」


本当に似合っていた。

白い髪に少しささやかな花のピアスが実に合っていた。


「春君も似合ってるよ」

「うんありがとう」


コスプレはサンタクロースの衣装だった。

紗絵さんはミニスカートで今にでも色々みえそうだった。

だけど可愛いのでOK。

僕らはそのまま遊園地を歩いた。

花火が上がる。

もっと生きていられたら来年の夏祭りの浴衣も見れたのかな。


「花火綺麗ですね」

「うん綺麗だね」


僕らは花火が終わると教会に向かった。


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