第8話

私は家に帰る途中でイヤな胸騒ぎがした。

春君の家の方に走っていると、

春君が胸を押さえて倒れていた。

私はすぐに救急車を呼んだ。

呼んだ後は脈を確認して、

え、普段よりも遅い。


「春君?」


何度呼びかけても返事は帰ってこない。

心臓はまだちゃんと動いてはいる。

私はとりあえず倒れた春君を抱き上げて肩に乗せて歩いた。

その時雨がすごい勢いで降ってくる。

これは急いで雨宿りできるとこ探さないと。

辺りを見渡すと近くに廃れた教会があった。


「春君あそこまで行こう、まだ死んじゃだめだよ」

「...............」


返事は帰ってこない。

それでも私は彼の彼女だから。

少し歩くと廃れた教会があった。

入り口は少し触ると扉が倒れた。

私は緊急事態だと思い仕方なく進んだ。


「は、は、そういえば私も肺ガンだったの忘れてたな」

「それもこれも春君のお陰かな」

「起きたら紗絵って呼んで貰わないと」

「またキスしちゃうぞ」


運動した後からか咳が止まらない。


「ゴホッ、ゴホッ」


とにかくいったん横に座らせないと。

私は春君を教会の長椅子に座らせる。

まだ息は、

まだ脈はある。

よかった。


「くしゅん」


そういえば今12月だった。

私は急いで制服を取り出すとそれを春君の身体に巻き付ける。

これでいいかな。

教会は真っ暗で少しだけ月の光が入ってくる。

それが教会の色つきのガラスに反射すると何故だか幻想的に見えた。

私はペンダントを取り出す。

それを光の方に向けると青く輝いていた。

意識が落ちそうになる。

救急車の音が聞こえる。

よかった、間に合った。

私の意識はそこで闇に落ちる。



目が覚めるとまた病院にいた。

あれ確かどうなったんだっけ。

確か道路で急に息が出来なくなって。

それから、


「先生真田君起きました」


前見た先生が現れる。


「いや、今回は運がよかった」

「え、どういうことですか」

「いや冬木さんが君のことを運んで身体を暖めてくれていたんだ」

「いやあれがなければかなり危なかった」

「冬木さんは?」

「隣だよ、行くかい?」

「はい」


僕はお医者さんに案内してもらって冬木さんのところに向かった。

冬木さんは病院の服を着て髪はゴムで束ねてあった。


「あの冬木さんありがとう」

「いいよ、けど生きててくれてよかった」


冬木さんの目には涙が浮かんでいた。

あ、あれ僕そんなにやばかったの?


「それとこれからは帰る時は一緒に帰ろうね」

「うん」

「それと冬木さんじゃなくて紗絵ね」

「え、その紗絵さん」

「もう一回紗絵って呼んで」

「紗絵」


それから三回ぐらい言わされた。

そして僕らは即日退院することにした。

お医者さんにはちゃんと許可をもらった。




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