第1話 条約違反

 怖いほど静かな宇宙空間に漂う4体の戦闘用タイタンは、もう目的地へと間近に迫っていた。


 「こちらアルファ、目的地付近のチェックポイントへ到着」


 「了解ラジャー。非常用ハッチはハッキング済み、予定時刻通りに遂行せよ。」


 作戦司令部からの通信が聞こえた。


 「全員EC(電子対抗)デバイス動作確認せよ」


 隊長のポールはヘルメット内部のマイクを通じてメンバーへ伝えた。


 「EC確認」


 青い瞳をした地球出身の女、シビラ・マルティーニはECデバイスが動作済みであることを確認し、隊長へと伝えた。

 彼女は地球合衆国(USE)が組織した対テロ特殊部隊、通称ガイアの最年少メンバーである。ガイアは当初、第三次世界大戦後の紛争やテロに対応するための部隊として編成された。しかし、メディチ独立戦争からは殆どが反地球政府への対応が主になっている。


 「でもビックリするくらい警備が手薄ですね。地球政府側の俺が言えたもんじゃないけど、宇宙連合側にも怠け者がいるだな。」


 ブルースはガムを噛む音をスピーカー越しに響かせながら言った。


 「ここ第12コロニーは宇宙連合の拠点から最も離れてるからな、それに産業用コロニーとだけあって他のコロニーと比べて小さいし、連合軍も暇なんだろうな。制圧したら多少は宇宙連合の打撃になるだろう。」


リックはそう言うと、電子タバコの電源を落とした。


 「いいかお前ら、小さいコロニーだからって手加減するなよ。お前らの乗ってる新型タイタンを無駄にするな。」


 隊長のポールがそう言うと、シビラはますます緊張した。

 なぜ最年少のわたしが今回のメンバーに選ばれたのか、シビラはずっと考えていた。隊長は実力を見込んで、経験を積ませるためと言っていた。だが、ブルースもリックも、あのジョバーニ・メディチによって引き起こされたメディチ独立戦争を経験してきた猛者だ。シビラは彼らについていけるかが心配だった。


 4体のタイタンは予定通り第12コロニーの非常ハッチへと向かった。ポールがタイタンを操作し、非常用ハッチを開けた。ハッチは非常用ということもありタイタン1機通るので精一杯だった。

 シビラは最後尾でコロニーに侵入した。コロニー内は夜で、町や工場の明かりがぽつぽつと浮かんでおり、幼い頃に住んでいた工場地帯を思い出させる風景であった。


 「作戦通り俺とリックはコロニー制御の制圧。ブルースとシビラは連合軍基地の制圧へ向かえ!」


 シビラはタイタンの操縦レバーを強く握り、高まる鼓動を感じていた…。

 

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