第11話  壁の花

 来るんじゃありませんでしたわ……こんな夜会……

 頑張って着飾ってきたのに、今日の舞踏会は第二王子の王子妃の披露舞踏会だったわけ。

 なら、その旨を書いておいて欲しかったですわ。

 しかも来ているのは、年配のご夫婦が中心で、招待状もお父様とお母様に来ていたもの違いありません。


 大きな溜息をついていると、グラスを持った男性が近付いてきましたわ。


「これが本当の壁の花だね」


「アラン!!」


 アランでしたわ。


「これまた、気合の入ったドレで……目当ての男性でもいるワケ?」


「これは……間違えただけですわ!!お父様たちに来た招待状をあたくし用だと」


「ふ~ん?」


 アランは含みのある笑い方をしました。


「アランこそ、ミレーユはどうしました?今日は同伴の夜会なのでしょう?」


「ミレーユは、王に挨拶してないだろ?18だもんな。今日は昔の近所の未亡人に連れて来てもらったんだよ。こういう所には、商売のネタがゴロゴロしてるからな」


 あたくしは、持っていた扇を開いて、顔を隠して言いましたわ。


「あなたは今、お金には困っていませんわよね?」


「君こそ、一人で壁の花なんて、勿体ない」


「今日は、妻君がご一緒で、誰もあたくしに声をかけてくれませんの」


「……てことは、この王城の習わしも知ってるってことか……」


 アランは非常に、にこやかな顔で言いましたわ。

 あのこととは、この城が貴族たちの情事の場所に使われることを意味してます。

 この城は、古王国のドーリアの王城から、改築を重ねて、とんでもなく広い城が出来上がってしまいました。

 それ故に、隠れる場所も多くて、王族のプライベート空間以外の部屋なら、使用に許可などいりませんのよ。


 あたくしは、アランの手を引いて、とっておきの隠れ部屋に行きましたわ。


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