第59話 カイトの街で
『魔動車』に乗ってゆっくり時速40キロ程度で走りカイトの街の門が夕刻前の4
時少し前に着いた。
門を警備する兵士が珍しそうに中を覗くがミラー越しに外からは覗けない仕様になっている。
この国ではつとに有名なスザンヌが冒険者カードを全員の分を見せて問題なく通過した。
「スザンヌ様達4人はSランクなので伯爵位を授与されているのですよね?」とエリーナが聞いた。
「いや、ルビーゼとマーガレットは爵位は無いわよ。もともと私の侍女だったから」
サトルは車を冒険者ギルドに止めて「スザンヌ、受付で食事が美味しくお風呂がある宿を聞いてくれる?値段は気にしないから」
スザンヌが車から出て
冒険者ギルドに行くと受付嬢がスザンヌを見て直立不動になった。
「スザンヌ様ご無沙汰しております、きょうはまたカイトにどのようなご用件でしょうか?」
「あら、ミルバレナ久しいな!きょうは仲間とこの街に来たのでいい宿を紹介してもらおうと伺ったのよ。風呂付きで食事が美味しい宿を教えて」
「それでしたこのギルドの向かいの”花園の宴”という宿がいいです」
「ありがとう、明日でもまたクエスト受けにくるわね」と言って戻った。
「サトル向かいの宿の”花園の宴”がお勧め出そうよ」
カイトの街にはAランクの上位冒険者が二人いるが、そのうちの一人が朝食を食べに降りて来た。
スザンヌを見て「スザンヌ様ご無沙汰しております、きょうはこちらのやどにおとまりなのですか?」
「あら、キニロッサお久しぶり!きょうはどうしたの?あなたこのカイトの街に家を買って常駐しているのでは?」
「きょうはトロモから商隊の護衛依頼で10人ほど冒険者とダウンゼン王国の王都迄の護衛依頼でこの宿に全員が泊まっているんです」
「キニロッサ、紹介するわ。こちら私の旦那様のサトル」
「初めまして、冒険者をスザンヌと一緒にしてますサトルです」
「男性が座っていたので一瞬スザンヌ様の荷物持ちの方だと思いましたが身のこなしで私より遥か高位の冒険者と思いましたが、スザンヌ様のご主人でしたか。初めまして、私はAランク冒険者をしておりますキニロッサです。スザンヌ様には色々ご指導していただきお世話になったものです」
「キニロッサ、サトルは私より数倍も強いわよ、色々な意味で」
「スザンヌ様よりお強い?それではこの大陸で一番の強者ではありませんか!」
「剣でも魔法でも敵わないもの」
「一度お手合わせご指導願いたいですわ」
「ところでスザンヌ様たちはまたどうしてキタミからこちらへ?」
「私たちは仲間と冒険の旅でこれからダウゼン王国のダンジョンを踏破しようと国境に向かう途中よ」
そんな話をしていたら、ルビーゼ達5人もおりて来た。
「あら!キニロッサお久、どうして宿に?」
「なんだ、セリーナたちもスザンヌ様と一緒なの?」
「サトル様達の戦い方から少しでも技術を学ぼうと同行させて貰っているの、以前私たち3人はダンジョンでサトル様に命を救って頂いて・・・」
「サトル殿はそれほどの力なの?」
「ええ、人外の化け物に近いわ」
「おいおい、本人を目の前に化け物はないだろう」
「キニロッサはどうして宿なんかに?」
「ああ、今スザンヌ様にも話していたのだが商隊の護衛依頼で隣国のダウンゼン王国の王都まで護衛のクエストで10人程の冒険者とトロもを出発してここに昨夜着いたんだ」
皆で朝食を食べていると、キニロッサの仲間達10人の冒険者達も食堂に降りて来て20人弱の冒険者の集団で朝食となった。
キニロッサの他の冒険者がどうして荷物持ちが一人加わっているのか不思議がっていたがキニロッサがスザンヌのご主人だと紹介してこの大陸の最強の冒険者だと皆に紹介した。
流石に10人の護衛冒険者達はスザンヌの名前はこの国最強のギルドマスターだと知っていたがそれよりも強い男性の冒険者だと言われて一同が驚いていた。
また、スザンヌがギルマスを辞してご主人と冒険者をしていることにも驚いていた。
キニロッサの仲間の一人が「サトル殿は冒険者ランクは?」と聞いて来た。
「自分は今はSSランクでスザンヌと一緒ですよ、またルビーゼ、マーガレットがSランクです」と事も無げに言うものだから全員が驚いている。
護衛依頼のキニロッサの仲間達は彼女以外は全てBランクで、まだサトルの所作を見ても強者とは判断できないようだ。
「スザンヌ様、もしよろしかったら王都ギゼ迄道中ご一緒しませんか?数年ぶりにお会いして積もる話もしたいので、久しぶりにセリーナ達とも一緒に」
「そうね、ダウゼン王国のダンジョンを踏破するのが目的だから構わないわ、いいでしょ?サトル」
「別に途中にダンジョンは無いようだから王都までのんびり商隊の後ろに着いていっても構わないよ」
結局7人のサトル達とキニロッサの11人の護衛依頼は20人ほどの商隊の護衛で王都ギゼ迄行くことになった。
最初はしんがりを受け持っていたが、あまりにも遅いため、10人の護衛依頼の5人が受け持ち、サトル達、魔動車での移動の7人は先頭を行くことになった。
招待には20人のうち、4人の男性が食事を作ったり、荷物の整理をしたりと商隊にしては珍しく男性も加わっていた。
サトルにはとても新鮮に映っていた。
カイトを出てしばらくするとコボルトの群が襲ってくるが、セリーナ、メリーナ、エーデル3人が剣で首を切り落として簡単に処理していった。
関所の街クオリパラの手前で強盗団の群れ30人程に襲われるが、サトル一人で
【インビジブルハンド】で強盗団の胸を掴み放題で喜んで気絶させて縄で縛って関所の兵士達に突き出した。
どうやら指名手配されていた集団で兵士から「クオリパラの冒険者ギルドニコの書類を出して報奨金を受け取ってくれ」と言われた。
スザンヌがなにやら不機嫌に「サトル、スキルは厳禁といったでしょ?」
「だけど、気絶させるには30人も大変でしょ?剣で峰打ちでも時間がもったいないし、止むを得ずだよ」
セリーナ達は強盗斬が次々意識を奪われて行く様を見て不思議がっていた。
程なくオリパラの街中の冒険者ギルドに着き、兵士から受け取った書類を冒険者カードと一緒に受付に出すと、受付嬢はサトルの冒険者カードを見て驚いた顔をして書類を受け取った。
「サトル様強盗団捕獲の報奨金として金貨30舞をカードに入金させていただきました」と言ってプラチナカードをサトルに返却したがその手が震えていた。
隣の受付の女性が「どうしたの?キャメリア、青い顔して」
「今の男性の冒険者・・・」
「荷物持ちの男?」
「違うわよ、SSクラスの冒険者だったわ」
「ええええ!男よ?荷物持ちかFクラスの冒険者じゃ無いの?」
「Fクラスが30人もの指名手配の凶悪な強盗団を全員傷もつけずに生きたまま逮捕などできるわけないでしょ!」
「でも、我が国には男性で最高ランクはGクラスのボルガがただ一人の冒険者よ、それがプラチナカードの冒険者?ありえないわ」
そんな会話がされているとも知らず、サトルは皆が待つ外に出て、宿に向かった。
宿では商隊の連中が20人弱の部屋を確保してくれていて、さすが街々を行き来する連中のことはある。
手慣れた作業で、魔道具を使って前もってスザンヌ達7人分の部屋を追加で抑えてくれていた。
ちょうど昼時で昼食はそれぞれ好きなところで取ることになり、キニロッサと護衛の10人、それとスザンヌ達7人は宿から5分ほど行った少し高級な食堂に大挙して入って行った。
もちろん荷物持ちの4人の男性も護衛依頼の女性冒険者11人の私物を持ち歩きながら着いて来た。
17人と荷物持ち4人が食堂に入り、男性のサトルだけ席に着くと、食堂の従業員らしき男性が、「荷物持ちはこの国でも席に座れないよ」と小声でサトルに話しかけたがサトルが冒険者カードを見せると驚いてお辞儀をしてその場から離れた。
18人の冒険者が一堂に会してエールを飲み、キニロッサがスザンヌに向かって「我が恩師ノスザヌ様達との再会を祝して乾杯!」と叫んで皆でグラスを持ち上げて乾杯した。
キニロッサやエリーナはスザンヌやルビーゼ、マーガレットと昔話に花を咲かせているがサトルは護衛依頼の他の冒険者達から、冒険者ランクやら、強盗団をあっと
言うまに気絶させた技術をねほりはほり聞いて来てゆっくり食事もできない様子だ。
サトルは荷物持ちの4人の男性が気になり「君たちはお腹は空かないのか?だいじょうぶか?」と心配して聞いてみる。
「俺たちはいつものことで慣れているから気にせんでくれ、それよりも君は男でSSクラスの冒険者って、この世界で一番強い冒険者だな、男なのに信じられない」
「あなた方は仮に魔法が使えないにしても剣技を磨いて冒険者のBランク程度にはなれるのじゃないのか?」と4人にサトルが聞くが、4人の荷物持ちは全員首を振って「剣のスキルも持ち合わせていない男達は荷物こそモテるが剣をもって振るう力は誰も持ち合わせていないから無理な話だ」
「君ら毎朝体力強化の訓練さえすれば剣をもって振るうことぐらいできるようになるはずだが」と言ってサトルは4人のステータスをそれとなく見て見た。
確かに魔力は無く、特別なスキルは無い。
でも、鍛えれば剣を持って冒険者になれる程度には一応皆全く不可能なわけではないようだ。
王都に着いたら荷物持ちの4人のうち希望を聞いて冒険者に育て上げたいと密かにサトルは考えていた。
食事を終えて、荷物持ちが宿まで一緒に来てから荷物持ちは彼らの昼食を取りに近くの定食屋に向かった。
彼らが向かった場所は立ち食いの小さな定食屋で男性達が利用する食堂だ。
スザンヌとサトルはシャワーを浴びて二人で少し昼寝をすることにした。
ルビーゼとマーガレット達とセリーナは街に散策しに出たようだ。
サトルとスザンヌは4時ごろ起きて、サトルが荷物持ちの男性陣の事をスザンヌにはなした。
「私たちの荷物持ちとして雇い、その間にサトルが鍛えて冒険者になれるなら育ててみたら?」
「それじゃ、いいかな?」
「我が家のご主人はサトルだからあなたの決めたことには私はあまり反対はしないわよ」と笑って答えた。
それから二人は宿の裏庭に行き、素振りと瞑想をして部屋に戻ってもう一度シャワーを浴びて部屋で二人のお茶タイムを楽しんで夕食のために食堂に降りた。
ルビーゼ達もいて、6人はエールとつまみを頼み皆が降りてくるのを待っていると、見知らぬ騎士の集団が4人程食堂に入って来た。
一人がサトルを睨みつけ近づき「貴様荷物持ちは食堂に座れないのは知っているだろう?」
「知っているが俺が座ってはいけないのは何故だ?俺はお前よりはるかに強い冒険者だぞ?」
「なんだと?私たち教団騎士に向かって男のくせに何をほざく、嘘を言うと戯れといえど許さんぞ!」
「なら外でお宅ら全員と俺とで決闘でもするか?決闘なら怪我させても捕まらないだろ?」
「よし、貴様の決闘を受けてたってやる、吠え面かくなよ」
「と言うことだからスザンヌちょっと外であいつらを教育してくるから」
「サトル、ここはメッシーナ王国では無くマレーナ教国と言う事を忘れないでね」
「何か問題だったら国ごと消しよ」
「冗談でもサトルが言うとできちゃうからやめてね」
サトルと騎士達4人が外に出て、ルビーゼが心配してくれて冒険者ギルドの受付を呼んで立会人になってもらっている。
ギルド職員が「始め!」と叫ぶと騎士団4人が抜刀してサトルに襲いかかるが、サトルは【イレージング】で彼女達の剣を構えた利き腕を全て消し去り、気絶させてしまった。
冒険者の受付嬢がオロオロしているので「こいつらを元に戻してやるが立会人としてまだ残っていてくれよな」
4人にルビーゼがカツを入れて気絶している4人の意識を戻したが、肩から腕を失った騎士達は泣き叫んでのたうちまわる。
「ぎゃーがやー叫ぶな!騎士団ってそんなにヤワなもの達か、今から元に戻してやるから」と言って全員に『エリアハイヒール』をかけて元に戻してやる。
4人は泣き叫びながら震えている。
サトルが「これで思っていたよりはるかに強い男がいる事を知るんだな、これ以上文句言うと体ごと消すぞ」と言ってルビーゼと戻って行った。
騎士団の4人に冒険者ギルドの受付嬢が「あの人はこの世界で最強の冒険者の方で誰も叶わないSSクラスの冒険者ですよ、調べたところ数万の魔物を一瞬でハイにする強力な魔法で一人でスタンピードを鎮圧し冒険者だそうです」
それを聞いた騎士団4人は急いで馬に乗りギゼに向かって去って行った。
「サトル様の魔法は相変わらずえぐいですわ」とルビーゼも興奮して戻って来て食事を始める。
「サトル、大丈夫だった?」
「当たり前だ、俺があの程度の相手に怪我するわけ無いだろう?」
「そうじゃ無くて相手のことよ」
「ああ、ちゃんと直してあげて許したよ」
キニロッサ達も外に観に行きサトルの凄まじいスキルを見て全員が驚いていた。
食堂に戻ってもサトルは平然として食べ残した食事をしている。
「スザンヌ様サトル殿が騎士達の腕を一瞬に消した魔法はなんですか?」
「あれは彼だけが使える【イレージング】と云う魔法で部室の成り立ちを分解してしまう魔法らしいわ、彼は一瞬でこの教国さえも消し去ることが可能よ」
「それって神の力に等しい・・・」とキニロッサは呟いた。
「明日は皇都ギゼに着いたら私たちはダンジョンに潜るわ」
「キニロッサ達はそこで解散なの?」
「私らは帰りの護衛依頼をしてトモロ迄戻って解散です」
あとはサトル以外エールを追加注文しながら冒険者同士のたわいない話をして遅くまで盛り上がっていた。
異世界って魔物も人間も女性が9割なの? @homma3104
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界って魔物も人間も女性が9割なの?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます