第58話 セリーナ達が『改革の息吹』に加わる

セリーナは3人が宿泊している宿に戻り、メリーナとエーデルに『改革の息吹』のパーティーに加わり自分の技術を伸ばしてくると伝えると二人も『それなら私たちもパーティーに入れてもらって技術を吸収したい』と言い出した。


セリーナはまさか技術よりサトルに触れて”あの感触”を再び味わいたいとは言えず

幾ら何でも3人で入れちくれとは人数が多すぎると、なかなか結論が出ない。


1時間ほど3人で話し合った結果、スザンヌに3人で半年間だけお世話になりたいとお願いすることになった。


翌朝、セリーヌ、メリーナ、エーデルたち3人は揃ってスザンヌ達の宿に向かった。


スザンヌ達は宿の食堂で朝食を取っていた。


「どうしたの?3人揃って」とスザンヌ。


「実は3人で話し合ったのですが、私だけではなく3人を半年だけ鍛えると思って『改革の息吹』のパーティーに入れてください。人数が多すぎるのは承知してますが何とか連携も含めて技術を皆様から盗みたく、よろしくお願いします」とセリーナが言う。


「私たちは基本通常のクエストは受けずに、ダンジョンばかり潜り『マジックアイテム』等を目的にしているわよ」


「ダンジョンでの報酬やゲットする宝は我々は要りません、全てスザンヌ様たちの収入にして構いません」


「サトルはどうなの?」


「3人が鍛えて欲しいというなら別に構わないよ、でも、俺が鍛えるのは厳しいぜ!」


「今より強くなれるならもとより覚悟は出来てます」とエーデル。


「それじゃ、3人の得意な攻撃パターンを教えてよ」


「私が前衛で剣と火の魔法、メリーナが水魔法とサーチが出来ます。エーデルが土魔法と弓で後衛担当です」とセリーナ。


「7人が一緒にまとまって動くのは得策じゃないから、スザンヌとセリーナ、ルビーゼ、マーガレットで1チーム、俺とメリーナ、エーデルで1チームに分けて

ダンジョンに潜る、或いは階層毎に先陣、後陣に分けよう」


「そうね、それなら階層毎に交互に行きましょう!2チーム同時の場合も考えて行きましょう」とスザンヌ。


「それとセリーナ達3人は俺の朝練を一緒に行ってもう少し剣と魔法のスキルを上達させる。いいかな?」


「「「了解しました」」」


「それと、我々の戦い方、スキル等は絶対に口外しないこと」とサトルが付け加えた。


「それじゃ、宿を出たら”傀儡(カイライ)のダンジョン”に潜ろう」とサトルが言った。


7人の大所帯で冒険者ギルドにパーティー申請をして、全員のカードを受け付けしてもらって”傀儡のダンジョン”にむかった。


1階層はスザンヌチームが先陣をきった。

以前はスライムとゴーレムが出て来たが今回もゴーレムがいきなり5体出て来てしかも剣がなかなか効きぬくい岩ゴーレムで再生のスキル持ちだ。


後ろからサトルが「スザンヌ、再生のスキル持ちで魔石を奪うか岩自体を粉々にしないと剣ではなかなか難しいよ」


「了解よ、マーガレットとセリーナ、ゴーレムに最大火力の【ファイアボム】を放ってくれ、私とルビーゼがそのあと水魔法をかけて急激に冷やし、脆くなったところで細切れにしていこう」


「「了解です」」

マーガレットが3体に、セリーナが2体のゴーレムに【ファイアボム】を火力最大にして放った。


ゴレーム達の岩で出来た体が熱せられて真っ赤になって来た所にスザンヌとルビーゼの水魔法が放たれ、ジュワーっと大きな音とともに水蒸気が上がり、ゴーレムの岩でできた体に亀裂が多数出来た。


4人はすぐさま剣を抜き、亀裂の入った岩ゴーレムを打ち砕いて行き魔石を奪い取っていく。


魔石を取られたゴーレムは体も半分が破壊されて地面に横たわり動かなくなった。


2階層にはサトルが前衛でメリーナが中衛、エーデルが後衛で先陣をきった。

サトルの前には2メートルを超えるオーガのメスが剣を構えて2体吠えている。


サトルはオーガの巨乳につい目が行き、【インビジブルハンド】で2体の胸を揉み揉みするとオーガは歓喜の叫び声をあげて涎を垂らして絶命してしまった。


「サトル様、今の攻撃は何だったのですか?」とエーデルら二人から質問されるが

無視して前に進み3階層に向かった。


今度はスザンヌ達が先陣を切る番だ!


「サトル、後でおしおしきよ!」とすれ違いざまスザンヌがサトルにだけ聞こえる声でポツっと囁いた。


3階層はフォレストウルフ10匹にボスが高ランクのブラックフェンリルだ!

ブラックフェンリルはSランクに相当して本来群れを率いることはなく単独で

神獣と恐れられている程の高ランクモンスターだ。


「ルビーゼ、マーガレット、セリーナはフォレストウルフを倒して、私はブラックフェンリルを相手するわ」


スザンヌは『五芒星剣』を構えて一瞬でブラックフェンリルに近づき上段から首を切り落としにかかるがブラックフェンリルはそれをたやすく横に飛んで避け、口から【ファイアフラッシュ】をスザンヌめがけて放った。


しかし、スザンヌは『リフレクションリング』をサトルから貰っているため、ブラックフェンリルが放った魔法が反射されて自分に戻って来て、ブラックフェンリルは慌てて後ろに飛びのいて距離を取る。


スザンヌは『五芒星剣』に土魔法を纏【ロッククラッシュ】を断続的に放ちながら【縮地】を使ってブラックフェンリルに肉薄した。


ブラックフェンリルは【ロックフラッシュ】を避けるのに気を取られてスザンヌが背後を取ったのに気づくのが遅れ、気が付いた時には首を切断されていた。


スザンヌは久しぶりに本気を出して魔物と戦った気がして清々しかった。

横の戦いを見ると、3人も10体のフォレストウルフを丁度倒しきったところで、サトルが【次元ストレージ】にしたいをせっせと回収しているところだった。


「スザンヌ様3階層で神獣のブラックフェンリルが出てくるところを見るとこのダンジョン、サトル様が踏破した当時よりかなり強い魔物が再生されていますね」

とルビーゼ。


「やはり一度踏破されたダンジョンが再びコアが再生されてダンジョンが成長してくると魔物は以前よりはるかに強い魔物がでてくるようだわ」とスザンヌも同調する。


4階層はサトル達が先陣だ。

以前は川にケルピーがいたが、その川はなく、ごろごろとした岩が落ちている荒地のフィールドの先に小高くそびえるような山がゆっくりこちらに向かって動いている。


「あれは山ではなく魔物か?」とサトル。


「サトル様、あれはベヒモスタートルという巨大生物で魔法も対物攻撃も効かない亀の化け物です」とメリーナがサトルに説明した。


「動きが緩慢だから何とかなるか」サトルは【鑑定】してベヒモスタートルの弱点を調べると、甲羅から出ている足と攻撃で首を出した時に首から顔を切り落とす事で倒せそうだと感じとった。


「それじゃ、メリーナさんとエーデルさんは無駄でも魔法でアイツの甲羅めがけて魔法を放ってもらえるかな」

彼は【次元ストレージ】から『誅戮剣』の大剣を取り出しベヒモスタートルの首元に一瞬で【転移】した。


甲羅に向かって【ウォーターランス】や【ロックボム】を二人が放つが全く魔法が甲羅にまで届かない。

ベヒモスタートルはのろのろした動きで首を出して口から巨大な魔法陣を描き今にも強大な魔法を放とうとした瞬間、光の速さで『誅戮剣』がその首を切り落とした。

「ギャァー」と大声をあげて巨体から首が落ち、Aランクのベスモスタートルはその生涯を閉じた。


【次元ストレージ】に回収して、5階層に進む。


5階層は暗い洞窟に死臭が漂っている。

スケルトンが10体、バンパイアが10体その奥にはここの主のバンパイアロードがいた。


「ルビーゼ、マーガレットと二人でスケルトンを砕いて、私とセリーナでバンパイアを処理するわ」


ルビーゼとマーガレットはスケルトンの剣を躱しながら頭蓋骨から剣で砕いて倒していく。

スザンヌはバンパイアに【聖魔法】で【ホーリーライト】を浴びせて消滅させ、セリーナはバンパイアの魔石を破壊して殺していった。


最後のバンパイアロードが凄まじい瘴気の【コキュートス】を放ち4人の精神を破壊しにくるが『リフレクションリング』でそれを跳ね返し、スザンヌが『聖剣ガデリウス』を抜いて一気に首を切り落とした。


通常の剣ではすぐに再生されるが『聖剣ガデリウス』はそれさえも許さず瘴気とともにバンパイアロードを消し去った。


その戦い方を見たサトルの後ろにいたメリーナ、エーデルは夢でも見ているような顔をして驚いていた。


6階層の平原にワイバーンが3匹いた。


「それじゃ、1匹ずつ行きますか」とサトル。


メリーナは【ウォーターランス】で翼を居抜き飛べなくなったところで【縮地】で首を剣で一閃してして切り落とし、エーデルも【ロックボム】で翼を破壊して飛べなくしておいて首を切り落とした。


サトルは【転移】でワイバーンの背中に一瞬で移動して首を捻じ曲げて同じく瞬殺した。


7階層は前回同様海のステージで『水陸空の乗り物』を取り出して7人が乗り込んだ。


「スザンヌ様、これは魔動車ですか?」


「サトルが古代遺跡で見つけた設計図を元に作って改良した乗り物で空も飛ぶわよ」と告げると3人は固まってしまった。


100メートルほど進んで潜行しだし、1キロ先にバハムートが2匹、その手前には100匹ほどのシールワームがいる。


サトルはシールワームにスティール製の投網を放って100匹を一度に捕獲して光電流を流し込み全てを殺して回収ご1キロ先のバハムートに『魔導砲』から【ウォターランス】を放って倒して回収した。


8階層は前回同様岩場ステージだったが岩竜だけではなくモノケロースが2匹もいる。


「俺が岩竜を倒すのでメリーナさん、エーデルさんにモノケロースをお願いして大丈夫ですか?」


「「了解しました」」と二人が返事をして剣を抜き、モノケロースに向かっていった。

サトルは巧みに岩竜の高速岩礫を避けながら岩竜が吐き出す瞬間を『鬼切丸』で首を切り落とした。


9階層火山ステージで赤龍2匹しかも巨大で通常の1.5倍ほどの大きさだ。

スザンヌ達はシールドをして、セリーナにもスザンヌがシールドを掛けて保護した。


4人に赤龍2匹から強烈な火炎咆哮が放たれるがシールドで何とかそれを防ぎ

ルビーゼとマーガレットが1匹の赤龍の首を剣で切りに行くも、硬い赤龍の鱗に阻まれて剣が弾き返されてしまう。

さらに尻尾の強烈な攻撃を受けて二人が岩壁に吹っ飛ばされてしまった。

身体強化とシールドをしていたので岩に激突しても無傷だったが、二人は剣の攻撃では倒せないため距離をとって魔法攻撃に切り替えた。


一方もう1匹の赤龍に対してセリーナが【ファイアボム】で赤龍の注意を惹きつけている間にスザンヌが『五芒星剣』に魔法をまとって上段から一閃して一気に打ち下ろして首を切り落とした。


ルビーゼとマーガレットが手間取っているのを見て、スザンヌが赤龍の側まで肉薄して『五芒星剣』で首めがけて剣を一閃して切り落とし何とか2匹の赤龍を回収した。


10階層にたどり着いた。

以前は金獅子がいたが扉の前からは強烈な熱と魔力が放出されている。


「中には多分不死鳥フェニックスがいると思う、ここは俺だけが入って相手するから全員扉の外で待機していてくれ」というと扉をあけて閉めた。


「フェニックス、お前と戦う気は無いがダンジョンコアと宝箱だけ貰うわけにはいかないか?」


「私も君とは戦いたく無いがダンジョンの主として生まれたからにはコアを守る義務がある、もし私が敗れた場合はすまぬが数枚の羽を残して燃やしてくれ。さすればその灰から再び再生が始まるであろうから」


「わかった、俺が勝つのは間違いないから仕方約束しよう!」


「わしが一人の人間に簡単に負けるわけがなかろう」


そういうと、いっきに周りの温度が1万度の高温になった。

サトルは【絶対零度魔法】を二重掛けして尚且つシールドをして、使いたくはなかったが【魔石師】のスキルを使ってフェニックスの魔石を奪いに行く。


フェニックスも流石にSランクの魔物で容易には許してくれず、二人の気力の勝負となった。

しかし流石にサトルの力が1枚2枚も上でフェニックスは魔石をサトルに奪われ急激に温度を下げて横たえた。


サトルは【絶対温度魔法】とシールドを解いて、フェニックスから美しい羽2枚を抜き取り灰にして残した。

宝箱を開けると『魔法の創造の解説書』という新たな魔法を創造する本が有った。

【次元ストレージ】に回収して、ダンジョンコアとフェニックスを回収して皆のいる扉の外に出た。


「サトル終わったのね!」


「ああ、フェニックスはいずれ再生してまた生まれてくるだろうが、一応魔石と本体は回収したからギルドに戻ろう」


7人は最下層に有る『転移盤』に乗って1階層の入り口まで一気に戻りダンジョンから出た。


冒険者ギルドの資材置き場に巨大な魔物達を置いて、ギルド食堂で遅い昼食を食べながら待つことにした。


女性陣6人はエールを頼み、サトルは果実ジュースを頼んで全員が昼定食のオークのバター焼き定食を頼む。

定食はオークバター焼きと野菜スープにサラダとパンがついて銅貨20枚だ。

サトルがカード払いで全員の食事代を払い、清算を待った。


「セリーナ達3人はどうだった?私たちの戦い方は・・・」とスザンヌが3人に聞く。


「スキルの違いもさることながら魔道具、マジックアイテムの違いに驚かされています」とそれぞれ3人が感想を述べているとオークのバター焼きが出来上がってきた。


サトルはエールを飲んでいないのでさっさと食事を始めたところに清算が出来たと

素材置き場のチーフが持ってきた。


「スザンヌ様物凄い額になっております、貴重な大型の魔物ばかりで魔石も大きいので白金68枚、金貨88枚、銀貨58枚、銅貨97枚のなっております」


「フェニックスはこの街では初めてよね、魔石は色々使えるからここの冒険者も儲かるからよかったじゃない」


チーフがお礼を言ってスザンヌ達から離れて行くとサトルが「それじゃ俺はダンジョンコアと納品書を受付に渡してくるよ」と言って受付に向かった。


「サトル様のカードに一括で入金してよろしいですか?」


「もし面倒でなければセリーナ、メリーナ、エーデルに白金2枚づつ入れてあげて、あとは俺のところでいいよ」


「わかりました、それとダンジョンコアの分として白金10枚金貨20枚をサトル様のカードに入れておきます」


「コアはギルマスに渡しておきます」と受付嬢が言って全員の冒険者カードをサトルが受け取って食堂に戻ってきた。


「セリーナさん達に白金2枚づつ振り込んで有るからね」


「私達はいらないと言っているのに申し訳ない」


「俺たちも使えないほど有って、別に全く問題ないよ」


「食事を終えたら『魔動車』に乗ってミモトを出て西ではなく南に向かおうと思うのだけどどうかな?」


「サトル、南はマレーナ教国とダウゼン王国だがどちらに向かうの?」


「俺的には真南の降りて先ずはダウゼン王国に行こうと思うけどどう?」


「私もマレーネには何度か行っているので未だ2回ほどしか行ってないダウゼン王国に興味あるわ」とスザンヌ。


「私たちはサトル様スザンヌ様について行くだけですから」とルビーゼ達。


「私ら3人はメッシーナ王国から出たことがないのでこれを機会に色々な国々を冒険しながらレベルをあげていきたいです」


「それじゃ、食事を終えたらダウゼン王国に向けて出発します」とサトルが告げた


サトルは『地図帳』を広げミモトからダウゼン王国に向かう道を調べ、ミモト→カイト→オリパラ(国境検問の街)→ギゼー(ダウゼン国)の道順で行くことにした。


「それでは先ずはカイトで1泊する予定で『魔動車』に乗り込んでくれ」


7人の冒険者を乗せた『魔動車』はミモトの城門を出て一路カイトに向かって街道を走り出した。



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