第2下話ドキドキ♡初めての列車強盗 下














「バーカ!!!!!」

「アホ!!!!!!」

「ボケナス!!!!」

「クソガキ!!!!」

罵詈雑言の怒号が飛び交う車両内に先に捕まっていた乗客、運転手、客室乗務員、そして捕まえた列車強盗も気が滅入っていた。その原因は最後に捕まえた2人、白髪のアジア系アメリカ人と青髪の女か男か分からないヘンテコな奴だ。拘束してからずっとこの調子なので、うるさいから片方でもいいから猿轡でも噛ませようかと思ったら噛もうとしてくるし蹴ってもくるのでただ口喧嘩してるだけの分マシだなと思っていたが寧ろ逆だった。近くの海でコイツら捨てようなど目出し帽の集団が話してるさなか創はトオルに小さな小さな声で耳打ちした

「おいアホお前確か折りたたみナイフ持ってたよなそれで縛ってる縄切れないの?」

「アホって言うなクソガキ、あれはアイツらにもみくちゃにされて拘束された時にはもうなかったぞ」

「役立たず」

「なんだと!!!」

また大きな喧嘩になりそうだったが周りからの視線が痛々しいのでやめた。


「あ〜あ早く桃木助けに来てくれないかな…」

「ふん他人の助けを待つか出来ないなんて情けねえな」

「は?死ね」

「なんで俺が何か言うたび罵詈雑言するんだよ!」

「本心伝えてるだけだよ」

「このクソガキほんとムカつくな」

なんやかんやあったが罵詈雑言と怒号が陰に潜みはじめた為一時の安心が到来したかと皆勘違いをし始めたがその勘違いもすぐ壊される物であった。








(ト……オ…───……─────………ル…さん)

どこからか聞こえてきた自分を呼ぶ愛おしい人の声にトオルの体が跳ねた、鏡恋さん、鏡恋さんどこにいるんです?そう考えながら耳を澄ます。(こ────です、…こ………)途切れ途切れ聞こえてくる声。彼女の声を聞いた瞬間彼女の事しか頭に入ってこない彼女以外の誰かが何か言っているが多分特に意味がない事だろうと受け流し続けるトオル。

(トオルさん、ここですよ)

やっとハッキリ聞こえた、聞こえてきたのはトオルの真後ろの上半身ぐらいなら映りそうな鏡が飾られている柱からだ。鏡恋さんの能力でここまでやってきたのか、わざわざ能力まで使ってこんなろくでなしの事を助けに来てくれるなんて。トオルは嬉しさのあまり一周まわって泣いておりそれを見た創は、気味悪がっていた。


(トオルさん今助けますからね)

その声がトオルに聞こえるのが早かったか柱に飾られていた鏡が落ちておりてきたのが早かったのか飾られていた鏡が勢いよく落下してトオルの首近くまで来たその瞬間鏡の中から長い黒髪を綺麗に切りそろえた麗しい女性が現れたかと思いきや、その女性は真っ白な洋包丁を握りしめておりその洋包丁をトオルの首筋にあて洋包丁に力を込め突き立て刺し殺した、トオルの首から真っ赤な血が勢いよく飛び出す様はホラー映画そのもので客室車両は阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。泣き叫ぶもの、恐怖のあまり失禁したもの、嘔吐したもの、失神したもの、現実逃避するもの等様々いたが特に近くで見る事となった創にとって初めて人が殺される、生物が殺される瞬間であった。かかった血はさっきまで生きてた事を証明するかのように暖かく鉄臭かった。恐ろしく拘束されてるとはいえ身動きがとれず体が固まってしまった。だがひとえに体を支配した感情は恐怖だけではなくどこか懐かしい気持ちも蘇ってくるようだ。


キャー、キャーと喚き散らす乗客達etc…は我先にと出入口へと向かっていっている。



───────創はここで気がついたのだが知らない間に自分の拘束が解かれているのだなんなら他に捕まっていた皆全員拘束が解かれている。


「創さん大丈夫ですか?」

創に声をかけたのは先程トオルの首に洋包丁を突き立て殺した返り血を浴びている鏡恋であった。

「もしかしてだけど拘束されてた人全員の拘束を解いてたりした」

冗談交じりの話のつもりだったが鏡恋は首を縦に振りこの人本当の化け物なんじゃないかと想像を膨らます。


「まあ…大丈夫だけど…トオルあなたの事好きって言ってたけど殺していいの?」

「ええ大丈夫ですよトオルさんを殺すのは私なりの愛情表現ですし私に殺されるのもトオルさんなりの愛情表現なんですよ」

全く意味が分からないし一生分かりたくもない理論なので軽く流してこの話を終わらせる創に鏡恋は、

「他の人ももう脱出しましたしあなたももう逃げた方がいいですよ、今からレイクブルー号はハリケーンによって脱線して海に沈みますから」

と突拍子もない真実を突きつけ、自分で殺したトオルを腕を引っ張り出てきた鏡に収納した後鏡恋自身も入っていった。創は仕組みが気になって2人が入っていった鏡を触るも変哲もない、ただの鏡に戻っていた。























逃げるったって地面に比べて線路が高い位置に有って確定して高いところから落ちるって事だしまだ走っている列車から降りるなんて恐怖でしかないがだが海に沈んで一緒に死ぬのも怖い。創は怖くて怖くて仕方がなくて拘束も解けたのに動けずにただガタガタ、ガタガタ震えてると出入口の方で何か物音が聞こえた。もうすぐハリケーンによって脱線し海に沈む予定の列車にまさか入ってくる気狂いがいたとは、とその人物の事が気になり物音がした方を見てみるとそこには創の健康的なボディーガード、桃木かなめが汗をだらだらと流し息も絶え絶えの様子で立っていた。


「はあ…はぁ…創さんやっぱりまだ降りていなかった……」

「も゙、桃゙木゙ぃ゙」

創は涙も鼻水も垂れ流しながら四足歩行で這うようにして桃木の元へと向かった。

「創さんは変なとこで自信家の癖にビビりでチキンでどうしようもない程怖がりですからまだ残ってるって思ってましたよ」

「ゔる゙ざい゙…ぃ゙」

「ははは、すみません……それじゃ降りましょうか」

「どゔずる゙の゙?」

「まず創さんがあたしに抱きついて、あたしが飛び降ります!以上!」

「死゙ぬ゙ぢゃ゙ん゙!!」

泣きっぱなしで声もガラガラになり桃木の腹辺りに顔を押し付け、涙か鼻水か何か分からないもの擦り付ける、そんな創に桃木は割れやすい物を触るように優しく創の髪を撫でる。

「大丈夫ですよ創さん、もう泣かないで鼻水とかも付けないで、あたしを信じててください」

創の綺麗な顔の涙の溜まった目から涙を拭き取り笑って見せた。創も固く泣きっ面だった表情が柔らかくなっていき口角を上げ笑っているような表情へと変化していった。そしてついに飛び降りる時、創は桃木にしっかり抱きつき、桃木もまた創を落とさぬよう抱きしめ、車輪が回転を幾度となく繰り返し、猛スピードで走っているのが確認出来る開きっぱなしの出入口がすぐそこにあった。

「ぐすっ…なあ桃木本当に大丈夫かな…」

「んも〜さっき信じてって言ったじゃないですか、それじゃ行きますよ」

「待って!心の準」

「やほ〜〜〜〜い!!!!」

謎の雄叫びを挙げるやいなや桃木は出入口から飛び降りた。心の準備も出来ないまま飛び降りる事となった創は目を固く閉じた。目を閉じてすぐこんな言葉が創の耳に入った。【

とても聞こえずらく他人に聞かすつもりは毛頭ないであろう言葉、よくファンタジー物で魔術師とかが言っている呪文であろうか。その言葉については全く分からないが、この言葉を一言一言丁寧に丁寧に紡ぐ様子いつもより透き通った声全てが嘘みたいに綺麗だった。

だが次の瞬間何か足元からとてつもない風が流れているようだ、どんどんどんどん風力が強くなっていき吸い込まれはしないものの勢いがとてもありすぎる。なんだこれはと思い固く閉じていた目を開くとそりゃあまあデカめのハリケーンがレイクブルー号を巻きとっているではないか、どんどん、どんどん、ハリケーンは遠のいて行きどこかへ行ってしまった。

「ハリケーンがレイクブルー号脱線させて海に沈めるってお前がするのかよ!?」

「あのハリケーン大きさこそは大きいですけどすぐ消えるので他の土地にも迷惑がかかりませんよ〜!」

「別にレイクブルー号消す必要なかったんじゃない?」

「いや〜鏡恋さんがね、 ここでは証拠を残しすぎたのでこのまま残してたらやった事がバレてしまう、と言ってて皆助けられる方法の『パニック起こして皆追い出そう』って方法に協力する代わりにってレイクブルー号の破壊を任されたんですよ〜」

「………そういえば荷物とかちゃんと取ってきた?」

思い出したので創が訊いてみたが桃木は体をビクッ、と跳ねらせ目を丸くしたまま俯く。

「おい、おまっ、嘘だよね…?……ね!!」

陸にいる降りてきたレイクブルー号から脱出してきた人達が見てきた、ふわふわと緩やかに落下していっている2人はそんな会話をしていた。



















「いや〜あの時鏡恋さんがボコボコにしてた大きめのオブジェクトと化してた人とかほんと全員生きてて良かったですよね〜」

「1人思いっきり死んでたぞ」

「トオルさんは例外ですよ♡ねえトオルさん」

「はい!鏡恋さん!!!!」

先程明らかに鏡恋に首を包丁で突き刺されて死んでたはずなのにピンピンしている白髪の日系アメリカ人に少し恐怖を覚えつつ、(まあ無事に済んだから良かったか…)と納得する創。


「ところで創さんこれから先どうします?」

「どうしますって……なにが?」

桃木に問いかけられ創は質問の中身も分からない為首を傾げる事しか出来ない。

「トオルさん、鏡恋さん、そしてあたし、多分指名手配されるんですよね」

「はぁ!?」

自分が指名手配にされる事に驚いてさっきまでこっちを気にせずに鏡恋とイチャイチャしてたのにこっちの方を凄い形相で見つめるトオルに鏡恋は上品なお嬢様のように笑って、

「モンスター、妖が基本人間、亜人にたいして犯罪行為を行う事は出来ません。もしやってしまったら指名手配犯になります。 それに金額も高くなってしまうのでハンターとか退魔師によって狩られやすくなっちゃうんですよ、私や桃木さんはモンスター、妖側、トオルさんは後天的だとはいえ同じくですし、 だからあなたは今までと同じくでかなめさんと一緒にいるって事は指名手配犯と一緒にいるから狙われる、何もしてないのに暴言とか吐かれたりとかも承知の上でついて行かなきゃなりません」

そう淡々と説明する鏡恋の傍には自分と鏡恋が指名手配犯になるのが気に入らないと顔をしたトオルがいた。桃木はどこか寂しそうな顔をして創の手を優しく握っている。

「お前モンスター……妖って奴なのなんで黙ってた」

創は圧をかけて桃木にそう訊いた。

「正式にはどちらでもないけど似たようなものだし別に言わなくていいかな〜って」

「言えよ」

「はい………」

桃木の手を握る強さが分かりやすく弱くなった。反省はしているようで創は鼻で笑った。

「あの〜創さん?確か国際電話でかければ奥様、旦那様に電話繋がると思うんですよ……それであの、『桃木かなめは僕を裏切って指名手配犯になったから新しいボディーガードを手配して』って言えば多分新しいボディーガードは見つかって左遷先、お家に帰れると思うので創さんはもう酷い目に合う事は無くなると思うので……あのう…」

あの基本ハイテンションで元気ハツラツな女である桃木から想像出来ない程なよなよしくどこか暗い、悲しそうな雰囲気だ。もっと彼のボディーガードでありたい。彼の事を見守ってたい。そのような気持ちが絶えず絶えず溢れ出ているが、もう犯罪者になる事は確定なので彼及び彼の家族に迷惑をかけたくない。2つの気持ちが拮抗しあって感情が整理出来ず笑ってるとも泣いてるとも怒ってるとも困惑してるとも喜んでいるとも見れる顔でもあり全て間違ってるとも言える顔になっている事を彼女は知らないし創も言う気はなかった。





─────長い沈黙の後、ああこれはお別れかなど考え桃木が泣きそうになるも、創が鼻で笑って口角もしっかり上げて所謂満面の笑みで

「な〜〜〜〜に言ってんだバ〜〜〜〜〜カ!もし仮に次に僕が認めるボディーガードはお前以上の実力があってお前より料理や掃除が上手くて、お前より面白い相手しかないんだ。そんな酷な事させる訳には行かないだろ?それに左遷させられたから家に帰るってなんかダサいからな、ならお前らに着いてってから家に帰るさ。そうやって成長した僕をみたママとパパに見せて、そして僕の事を蹴落とし失脚させた見苦しい大人達より大人になってやるんだ!それが暫くの僕の夢さ!」

桃木に握られていたが、緩めらていた両手を小さい手でできる限り強めに握る創。桃木の顔が先程とは一転していつものように明るくハイテンションな元気ハツラツな“桃木かなめ”に戻った。

「つまり……ボディーガードが続行って事ですね!」

「そうだよ、僕の事を守りつつ自分もしっかり守ってよねじゃないといなくなった時誰が僕を守るんだよ」

「っ!………はい!了解です!これからもよろしくお願いしますね創さん」

「よろしくね桃木」


創と桃木の会話を外野から聞いてこういう関係も良いですよね〜、と話し合ってるカップルに僕がいないところで盛り上がってるんじゃね〜と恥ずかしくて怒る創とあらあらと逆に楽しそうに入りたがりそうな桃木が入ってきたという。






これから起こる事は青年にとって永遠に終わらないし忘れない記憶になり、仙人の娘は不浄にまみれ煌びやかとは言えない真実の愛を学び、天才児には残酷でグロテスクな歴史の真実を教え、自然に反する魂には弔いと感謝と終わりを誰かに伝える話になって来るだろうがそれはまた後々







第3話 強奪!謎の洋館と研究所に続く

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鏡恋旅 唐島 潤 @oisii_toriniku

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