ほのぼの先端記

三日月てりり

ほのぼの先端記

 僕です。のどかな地域を訪ねてみたら、僕の生まれ故郷である都心のような利便性は全然なくて、もし自分がそこに暮らさなくちゃならないのだったら、とうてい生きていけないな、と思ってしまった。生きていられない場所で生きるとはどういうことだろう。僕は難解な命題を解くことを科せられた咎人のような気持ちになって、のどかな地域を不穏な気持ちで眺めた。のどかな場所などすべて最先端技術で覆い尽くされてしまえ、発展と栄光と、人類の発明発見してきた科学と工学と、その他の全ての叡智を使って、世界を人間色に染め上げてくれ。と頼む相手が神仏なのだから、僕も先端的な人間からみて、のどかな人間の範疇に入ってしまうのだろうと思う。

 人間の域を越えて、僕の心は、僕自身をも費やして構わない、未だ人が見つけていない何かを見つける贄となりたい。人柱でもなんでも僕はなってやる。僕は結局、オカルトに類する、科学にはそぐわない、愚かな人間だ。自分自身の本質と自分の望みとが違うことは僕という人間の身に起こった悲劇だ。僕は自分に絶望して、もうすぐ死ぬだろう。どうか、世界が僕のようなお人好しのためではなく、最先端の人間にとって生きやすい進歩的な状態を保てますように。僕は、僕とは違う、僕のために、命を費やす。政治家となり核武装を完遂した僕は、日本にとっての災禍であると論評する者も多くいる。それでも僕は自分の行いに過ちは無いと信ずる。世界との対峙に、きっと勝利し続けますように。先の短い自分に代わって、どうか、神様。お頼み申みあげ奉りまする。



2021/12/19

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