第16話 新天地にて 2(フリューエル)

 商業都市コイントスに向かって、ヘリコプターで空の旅。

 高空なので、雷鳴以外は寒そうにしています。

 雷鳴が「マリカ、宝石関連の知識は豊富か?」

 と、マリカさん(金魔)に聞いていますね

「兄さまも私も、詳しいです」

「じゃあ、この参考書を暗記してくれ」と分厚い参考書を渡しています。

「読み終わったら、次のを渡すから頑張って欲しい!

 今うちのジュエリーショップを任せてる奴が頼りない。

 後釜に座って欲しいんだ。君等ならできると『勘』が言ってる」

「『勘』ですか?」

「俺のバンパイア氏族では『予言』とも呼ばれる、精度の高い超感覚なんだ」

「わかりました、兄さんにも言って、勉強します!」


♦♦♦


「近いところから行きましょう………っと金額は度外視ですか?」

「はい、そうですね、高くても着心地のいいものが良いです」

「ではまず家の中で着る服のお店に行きましょう」


そこにはふわふわした、可愛い部屋着が沢山ありました。

「夢羊」という普通のウールとは一線を画す毛糸で編まれているそうです。

ほんとうにふわふわ………男性物と女性ものが分かれているのもいいですね。

私は黄色い物を探します。他の面子も「それぞれのカラー」で選んでいるようです。


 一人三着で、私は白地にオレンジの横ストライプのと、単色のパステルイエロー、濃いオレンジを買いました。靴下も防寒の物があったので3セットチョイス。

 指ぬき手袋も買いました。

 ヴェルはくすんだ青に、空色、コバルトの部屋着を選びました。靴下もチョイス。

 雷鳴は灰色地に赤いハートマークの散った可愛い物が一つ、真っ赤、えんじ色とクリームイエローの横ストライプ。もちろん靴下も買いました。

 ミシェルは黄緑、薄い緑に濃い緑のストライプが一つ、濃い緑にダイヤ柄の物をチョイス。靴下も三足です。

 あと、家の中で使える防寒スリッパがありました。カラー豊富です。

 なので、カラーに合わせて買いました。


 次は香草でしょうか。マリカさんが上質の香草の店を知っているそうです。

 香草は、血の味を決める重要な要素ですからね。

 到着してみると、そこは古今東西様々な香草が売っており、それだけで市になりそうな規模のお店でした。

 そうですねえ、寒いのでジンジャー・シナモン・カモミール・臭み消しのローズマリー、好みなのは菖蒲でしょうか。後レモングラスも好きです。

 ミシェルも選んでいます。ローリエ・セージ・ラベンダーという鉄板ですね。

 雷鳴君は店の親父さんとやり取りし、買い尽くしそうな勢いで購入していますね。


 次は服行ってみましょう。

 気分がいいのはやはり私も女なので買い物が好きなのでしょうか?

 防寒着はリッケルトで買ったものより暖かいうえ、薄くて動きやすいのがあるとマリカさんが言うので、即決でそこに案内してもらいました。

 なんでも、この北の大地にしか住まない特殊な大蜘蛛を飼いならし、糸を採取しているのだとか。ジャケットとズボンを身につけても軽くて暖か。

 このへんでは一番の高級品だそうです。1人4セット買いました。

 靴がごついのは、もう仕方がありませんね。

 次が防具ですので、着たまま向かいます。


 防具は、前の物もあるのですがそれは処分しました。

 新天地で新しいものを手に入れるのです。

 金属の防具はここでは一般的ではありません(凍るので)ので、ハード・レザーアーマーの全身鎧が一番の重装備です。全員それになりましたが「私達のカラー」に染めて貰う事にしました。明日取りにくればいいのですね。


 あとはこの辺の料理の本が欲しいですね。

 マリカさんが品ぞろえ豊富な店を知っているそうなので、そこへ。

 やはり本の市といっても通用するような品ぞろえでしたが。

 雷鳴はカゴをたくさん浮かせて、目についたのがあれば買っているようです。

 図書室に収蔵するんでしょう。

 わたしは「アイシクル州の料理」という本を、とりあえず買う事にしました。


 というわけで、水がめ・洗面器・水差しを買いに行きます。

 前回の教訓を踏まえて、マリカさんにはホーローのお店に案内してもらいます。

 水がめは天使は白、雷鳴は赤です。水差しも同じく。

 洗面器は個性が出ましたね。

 白一色でいいというヴェル。装飾が入った綺麗な陶器の物が私。

 ミシェルはウサギのキャラクターイラストが描いてあるプラスチック製の物。

 雷鳴は赤一色のホーロー製です。


「ところで忘れてたけどさ。お風呂なんだけど」

 む、確かに忘れていました。由々しきことです。

「別館を作ってサウナとお風呂を作ろうよ。ここら辺ではサウナが一般的でしょ?」

 

 サウナは、蒸し風呂という蒸気浴・熱気浴のひとつです。

 サウナストーンと呼ばれる石をたくさん乗せたストーブを熱し、その熱と、石に水をかけてつくる蒸気とで室内の温度・湿度を調整します。

 室内の温度は約50℃から120℃以上になります。

 入浴後は雪や水中に入る、もしくは外気で休憩を挟むなどクールダウンし再びサウナに入る温冷交代浴が一般的な入浴方法です。


「普通のお風呂は併設で。余り大きくはならないと思うけど、いい?」

「贅沢は言いません、サウナ自体高価ですしね」

「マリカ、手配できるかな」

「雷鳴様は発電機と燃料ははお持ちで?」

「無限収納庫に入れてある」

「では、ログハウスタイプのお風呂とサウナを作りましょう!」

「またドライアドに頼んで退いてもらうの?大丈夫?」

「あのあたりの木はまばらなので、サウナぐらいなら平気ですよ」

「そうか、それならいいんだ」


「次、セメントを買いたいんだけど。無限収納庫に入れるから2袋で良い」

「それでしたら、ちょっと離れてますけど、こちらです」

「何に使うんです?」

「ガレージを作業できる程度に広げるんだ。「サラマンダー」のメンテもあるし。

 あそこから列車の線路までは、楽勝で行けるよ。

 あとは線路沿いの道路を除雪しながら進めばいい。その機能を取りつけるつもり」


ホームセンターみたいな一画に出てきた。

「おじさん、できるだけ質がよくて、雪が残ってても固まるセメントないかな」

「あるよー。高いけどいいのかな?」

「問題なし。2種類あるの?じゃあ両方ちょうだい」


「マリカさん、寝具の置いてある場所は近いですか?」

「すぐそこですよ」

「フリウ?寝具なら………」

「あれはベッドでしょう?寝具は別では?」

「………言われてみればそうだね」

 寝具のコーナーで、あれでもないこれでもないと騒ぎつつ四人で選んでいきます。

 結果、とても暖かそうな寝具を手に入れました。即、亜空間収納行きですが。


 次は食器です。ほぼ私と雷鳴で選びました。

 ですが、各自の「血専用」と「普段のマグカップ」は皆真剣に選んでいました。

 血は雷鳴の発案で白いマグカップに可愛い色々なハートの付いているものを。

 ハート=心臓だからだそうです。

 普段使いのものは、陶器で「自分の色」のものを買いました。

 わたしが黄色系、ヴェルが青系、雷鳴が赤系、ミシェルが緑系です。


「あと、申し訳ないですが、化粧品を買いに行ってもいいですか?」

「「「あれ?フリウって化粧してた?」」」

「ほとんどしていませんが、さすがに基礎化粧品はつけますよ。化粧水と乳液ぐらいは。それに、ヴェルは私が香水を使っているのも見ているはずですが」

「ああ、いわれてみれば休暇の時、いい匂いがしているなとは………」

「でしょう?あと色付きのリップも付けているのですよ」

「「ああ、それは俺も気付いてた(雷鳴&ヴェル)」」


「と、いう訳なのでマリカさんお願いします」

「任せて下さい。私も女ですから」


「マリカさんのお勧めは?」

「それでしたら、さっぱりとしっとり、どっちが良いですか?」

「さっぱりですね」

「ではこれとこれ………美容液もつけませんか?」

「試してみましょうか」

「あとパックです。全然違ってきますから」

「そうなのですか?試してみようと思います」


「リップは薄づきがいいんですか?」

「フリウ、俺はもう少しわかりやすい方がいい」

「ではやや濃いこちらはどうでしょう。取れにくく、カップに色移りもしません」

「ああ、それはいいですね、いただきます」

「なあ、フリウ」

「なんです、ヴェル」

「俺はお前のフルメイクも見てみたい」

 かぁーっと頬に血がのぼるのを感じます。

「そ、それなら仕方ありませんね、マリカさん一緒に選んでください」

 微笑ましそうにニコニコされてしまいました。


♦♦♦


 買い物を済ませ―――荷物は全部亜空間収納に―――冒険者ギルドに向かいます。

「ところでマリカさん」

「はい?」

「この地方って獣人が多いのですか?よく見かけますけど」

「はい、この辺では寒さに強い獣人が多いです。

 それに合衆国自体、獣人の地位が高いんですよ。他国では見かけませんか?」

「見かけませんねえ」


 会話をしていると「冒険者ギルド」「馬車や車の方はあちら」「ヘリポート」という看板が見えてきました。ヘリポートまであるのですか。

「毎回ヘカトンケイレス商会の前に下りるのもなんですから、ここを使いましょう」

 大きな建物で、入ったところは待合室のある広い受付でした。

「総合受付」と「依頼受領受付」と「依頼完了受付」に分かれていますね

私達は「総合受付」なのでしょう。


「こんにちは、すみませんがこの冒険者カードは使えますか?」

 名札に「シア」と書かれた、白うさぎの獣人らしいお姉さんに聞いてみます。

「どれどれ………むー?だいぶん遠い所のですねー

 受け付けていませんのでレベルのチェックの後、新しいものを発行しますよぅー

 一応聞きますけど、犯罪者とかがながれてきたのではないですよねー?

 なぜここへ来ようと思われましたー?」


 私は正直にここまで来た経緯を説明します。再発は誓って無いとも。

「万が一に備えてブランロジアに居を構えています」

「なるほど。分かりましたー。やましい事がないなら契約書にサインできますね?」

 文面を読みましたが、要は犯罪者でないという宣誓ですね。

「いいですよねみなさん?」

「「「もちろん」」」

 全員契約書にサインしました。


「ではレベル測定です、この台(体重計みたいな感じです)に乗って下さいー」

 素直に乗って、全員58Lvだと証明されました。

「うそぉー、こんな高レベルの人が………!リッケルトってどうなってるのー!

 あ、すみません。すぐカードを作りますからー」


 シアさんは、手のひらサイズのカードに、機械で何やら刻印していきます。

 出来上がったカードはリッケルトのものよりも記載が多く(名前とLvだけでした)カードナンバーや有効期限、誕生日と年齢が刻印されています。

 Lvの所はわずかに光を放っていますね。

 不思議な七色の光沢のある、銀のカードです。

「ありがとうございました」みんなで頭を下げます。


「ちなみにそのカード、緊急事態の時は通話機にもなっててー。

 ここの番号は〇×△□〇とカードに念じて下されば通じますー。

 逆にこちらから連絡する場合はー

 音声で呼びかけですので、気を付けておいて下さいねぇー」

「「「「了解しました」」」」


「さあ、最後に食材を沢山購入して帰りますよ」

「あー、それがあったか」

「1週間分ぐらいは買わないとですね」

「食糧保管専用の魔法の箱を作るよ」

「あなたは器用ですね………」

「魔法の袋のバリエーションは学園で習ったからな」


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次回からフィアメッタ合衆国編が始まります!

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