04 - オンとオフ【後】
ご飯をよそってくれている姿を見ていると、どうしても思い出してしまう。付き合っていた頃はよくこうやって甲斐甲斐しくやってくれていた事も、結婚をして暫くするとやってくれなくなったどころかご飯も適当な物しか出てこなくなっていたなと。それに比べ品数の多さ、彩に健康面まで考慮してくれているであろうメニューを毎日用意してくれる清彦。彼もいつかはそうなってしまうのだろうか?と考えると清一郎は少し悲しい気持ちになる。
「シンさんどしたー?なんか急に暗い顔してる」
「え、そうか?」
「何か口に合わなかった?思ってたんと違うってなっちゃった?」
「そんなことない!キヨの作った物は全部美味しい!世界一美味しい!」
「あははっそんなに言って貰えるなんて光栄だね」
カウンターに置かれた新しく盛られた白米の入った茶碗を取ると、続きを食べ始める。
「また前の事でも思い出していたのかな?」
「な…」
「シンさんわかりやすいもんね」
そう言いながら隣に戻ってきた清彦が座り身体ごと清一郎を向く。
「何されたの思い出しちゃったん?」
「…ごはんをよそってくれるのは今だけなんだろうなと…」
「え、なにそれ、どういうこと?」
「おかわりをよそうのは甘やかして俺をダメにしてしまうから自分でやりなと言われてな。元々は自分でやろうとしたのをやめさせたのは彼女だったのにな」
「あー…最初だけ甲斐甲斐しい女ね…結婚すると豹変するタイプいるもんね。僕が結婚したらそうやって変わってしまうんじゃないかって心配?」
「結婚!?」
「わかってるよ、出来ないのは」
「いや、違う…キヨはまだ若いし、俺で良いのかなと思ってな」
「自慢じゃないけれど、付き合ってきた人はそれなりに多いし、付き合っていたのかも分からないやつらもいっぱいいるけれど…僕こんなに人を好きになったの初めてなんだよね。同棲まで出来ている今だけでも満足しないといけないと思うんだけれど…シンさんとの将来を考えちゃ、ダメかな?」
「ま、まだ…付き合って1年経ってないのに…」
「そういう所気にするよね、シンさんって…同棲するのも最初渋ってたもんね」
「いや、まあ…その…離婚してすぐだったからな…」
「そうだろうけれどさ…結婚どうのって話はいつかするとして…僕が出来る時は僕がよそうし、自分でよそった方が早いって思うなら自分でやればいいと思うよ。僕は甲斐甲斐しくないからね」
「そうか?随分色々してくれているが…」
「続けられない事はしてないよ。今やっているのはずっと続けられると思うことだけ」
今まで色々と世話をしてくれている清彦の行動を思い返してみるが、それでも色々とやってもらっているなと思う。清一郎は逆に彼に何かしてあげられているのかと考えてみるが何も出てこない。
「俺はキヨになにも出来てない」
「え?シンさんはここにこうして存在してくれているだけで凄い僕の為になっているよ?」
「存在!?」
「パートナーがいるってだけで幸せだからね!」
「キヨ…」
「無理な事は続けないし、そもそもしないから安心して!ほら食べちゃおう」
止まっていた食事を再開させ、早々に食べ終わらせる。清一郎が洗い物をすると流しの前に立ち、カウンターの上には清彦のお気に入りにアイスが置かれた。
アイスを食べ終えた清彦が片付けを終わらせ、なんとか無事に洗い物を終わらせた清一郎は風呂に向かった。
「割らなかっただけ良しとするか」
洗い終わりはしたけれど、泡が流しきれてないのを何個か見付け、風呂に入っている間に流し直してキッチン周りの掃除を終わらせてしまう。清一郎が出てきたら呑むであろう酒とつまみを用意してからソファの方のテーブルに持っていく。
「キヨ、上がった…今日は梅…いや冷酒飲もうかと思うんだが、一緒に…」
「用意してあるよ」
「ありがとう…よくわかったな」
「今日はちょっと暑かったもんね、冷たいのがいいかなって思っただけだよ」
清一郎がソファに腰掛けると今度は清彦が風呂へと向かう。晩酌中の清一郎が酔い潰れてしまう前にベッドに連れて行かないと今日は出来ないであろう。急ぎ目に風呂から上がり早々に髪を乾かしリビングに向かう。
「シンさん、僕にも頂戴」
「ああ、隣おいで」
隣に座ると清彦が自分のグラスを手に取る。清一郎からのお酌で酒を注いでもらい、互のグラスを当てて乾杯をしてから飲み始める。
「ん、美味しい」
「キヨが好きそうだなと思って買っておいたんだ」
「その割にはシンさん結構飲んでない?」
「すまん、つい美味くて」
つまみの乾き物も酒も進み、1時間もすればグラスに注がれた酒だけしか残っていない。清彦は酒に強いが清一郎はそこまで強くはない、その為すぐに寝てしまう。
風呂上がりにあった瓶の中の残りは全部清彦が飲んだが半分近く飲んでいた清一郎は既に眠そうだ。
「シンさん…眠そうだね」
「少しな」
「僕、えっちしたいな」
「んー…しよっか」
「いいね、酔ってるシンさん素直で可愛いじゃん」
「ん?酔ってなくても、普段も可愛いんだろ?」
「うん、可愛い」
清彦に向かい合うように腿の上に跨ると煽るように目の前でTシャツを捲り上げる。
「キヨの好きなように抱いていいぞ」
「どこでそんな煽り方習っちゃったわけ?」
「さあな…キヨ、俺の身体好きだろ?」
「めっっっちゃ好き。筋肉の付き方も触り心地も全部…全部えっちで好き」
腰に腕を回して自分の方へと引き寄せ、腹筋にキスをする清彦。徐々にキスを上へと移動させ、乳首に軽く吸い付く。
「僕を煽った事、後悔しないでね」
「しないよ」
「途中で嫌がってもやめないからね?」
「うん、わかった」
「じゃあ僕の部屋行こうか」
「えー」
急になんで嫌がりだしたのかと顔を見上げると、待ってましたと言わんばかりに両頬に手が添えられトロンとした表情の清一郎に口付けられる。驚きはしたが積極的な清一郎を滅多に見ることが出来ないのでそのまましたいようにさせようと清彦は目を閉じる。
舌を絡ませ合う程のキスをした事が無かったという清一郎は初め、清彦からのキスに戸惑い拒んだりしていた。しかし、今となっては自分から仕掛けてくるようになっている。それが嬉しく清彦がつい笑ってしまう。
「む…何故笑う?」
「いや、ごめん…成長したなぁってシンさん…最初こんなキス出来なかったのに」
「…苦手だったんだ…」
「じゃあなんで今出来るようになったの?誰かと練習したの?」
「キヨとしかしてない…」
「そうだね、人の唾液とか体液嫌いなんだもんね」
「気持ちが悪い…けど、キヨのは大丈夫だ」
「なんで僕のだけ?」
「好きだからかな。気持ち悪くないから好きになったのかもしれん…」
どっちが先でも自分を好きと言ってくれるパートナーが可愛くないわけがない。清彦がぎゅうっと清一郎を抱きしめる。
「シンさん、ほんと可愛い…無理。もう我慢できない」
「俺もだ」
「ここでしていいの?」
「いい」
「じゃあボトル取ってくるから脱いで待っていてよ」
部屋に入りローションのボトルを手に取り戻ってくる間に清一郎は下着一枚になっている。
一人だけ脱がせるのもそれはそれでいいけれど、早く肌で触れ合いたい気持ちもあるので清彦も服を脱ぎ捨ててソファに上がる。既に真一郎は下着も脱ぎどちらも全裸の状態で向かい合う。
「やっぱ今日はシンさんのしたいようにしよう」
「俺の…か…じゃあ早く繋がりたい」
「積極的でせっかちで…どうしたんだろうね?今日のシンさんは」
「そんな日もある」
「でもまだ慣らしてもない…いっ!?」
清一郎が身体を屈ませ、清彦のモノを口にふくむと舌で愛撫しつつ頭を上下させて刺激を与えていく。
「ほんと、どうしちゃったの…積極的なのも、とってもいいね」
「んー…ふふっ」
目を合わせれば何故か嬉しそうに笑うだけだ。清彦もこんな状態の清一郎を見たことが無かったので少し戸惑いはしたが、そこはやはり愛しい恋人だから全部可愛いで済んでしまう。
「大きくなったよ…シンさんのほぐさないと」
「風呂で…準備した…」
「そっか、いつも準備してくれているんだったね…ありがとう」
少し下にある頭にキスを落とし、後ろを向かせると尻にローションを垂らし、孔を濡らしていく。言ったとおり指を入れてみれば中は柔らかくすぐに受け入れられそうだ。
・・・・・・・・・
もう一度ソファでし、更に清彦の部屋でして、ドロドロのまま一緒に寝てしまった。片付けとか何もしていないやと思った清彦だったが、したいだけして満足して好きな人と一緒に眠れる幸せの方が大事だと片付けは諦め意識を手放した。
翌朝いつも通り6時半前には目が覚めた清彦。隣の色っぽい恋人は気持ちよさそうにぐっすり眠っているが、仕事があるので残念ながら起こさないといけない。
起こそうと肩を揺するが色っぽい声と共に寝返りをうってしまい、襲いたい衝動を抑えながらも清彦がもう一度肩を揺する。
「シンさん、おはよ…起きてシャワーだろ?」
「んー…もすこし…」
「隣にこんなに凶悪な凶器を持った狼がいるのにそんな色っぽい声出していいと思ってるの?」
「ん…?」
既に生理現象である朝勃ちしている自分のモノを清一郎の尻に擦り付ける。と、ようやく状況を察した清一郎の瞼が開かれる。
「キヨ、朝からはダメだ!」
「でもこんなにガッチガチなんだけれど…シンさんがえっちだから」
「んなっ…夜、あんなに出したのに…」
「僕が絶倫なの知ってるでしょう?もっとシンさんを悦ばせてあげれるけれど」
「シャワーに行く!」
慌ててベッドから降りようとする清一郎の腰に腕を回して清彦が止める。
清一郎は無理に振り払おうとはせず冷静にやめてもらおうと清彦を見ると、こちらを見上げ、タコみたいに唇を突き出している可愛い顔をした恋人がいた。
「キヨ…」
「おはよーのチューしてないけれど?」
「うがいしてない」
「いいよ、ベロ入れないし」
「チューだけだからな」
本当に重ねるだけのキスで満足したらしい清彦は下着を探しにベッドから降りていった。何故ちょっと残念に思っているんだ、俺は…と清一郎が困惑しながらも自分も下着を求めてリビングへと出て行った。
……オンとオフ(終)
――――――
全然温泉編じゃなかった。
(R18部分はカットしてます
清と清 鯛飯好 @chouhan_kou
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