第8話 悠久の初恋

  シオンは、ある思い出に耽っていた。鳳凰と呼ばれ今の中国を飛んでいる頃、突然、転生の時期が来て力を失い、墜落したところ、若き武将に救われた。その若き将軍は、常に孤独で、大群を率いて、もうすぐ大きな戦に出ると言った。シオンは、その若者の孤独に惹かれて、初めて恋に落ちた。


  その影響なのか、転生は起きなかった。少女のまま、その若者と数日を過ごした。その若き将軍は、隠れ家を出る際に、ケリをつけて戻る。ひと月経って戻らなければ、ここを去れと言い残した。


  シオンは、自分の血を茶色の小瓶に詰めて、もし、大きな怪我をした時はこの秘薬を飲むように泣きながら渡した。一か月しても、その若者は戻らなかった。するとシオンの転生がはじまり、鳳凰として再び大空に舞い上がった。

  

   後世にシオンは、女人の姿で訪れた山荘の主人である諸葛亮孔明から、

その若き将軍の最期を聞かされた。その若き将軍、項羽は、戦の天才であり、

最高軍略家だったが、情が薄く、人心を掌握できず、最期は、周囲の全てが

敵となり自害したという。


  でも孔明は、言った。

  「情のないものに大業は果たせない。

   それに彼の死骸は見つかっていない。

   だから、自害は劉邦の流した嘘だ。」


  物想いの最中、スライスたちが突然やってきて、みんな揃ったから、

  ミーティングに入るよ、と言ってきた。

 

 「このアパートの管理人室、101号室に集合!」


   その部屋に入ると、豪華な屋敷につながっていた。


  「これから、管理人さんであり、今回の戦いの軍師を紹介するね。

   それにみんなを集めることを提案した人物も彼なんだ。

   台湾項上グループ総帥、項閣さんだ。世界的なお金持ちだよ。」


   姿を現した人物は、シオンの知った顔だった。死んだはずの若き将軍

   項羽、そして、その秘書は諸葛孔明だった。シオンは何百年ぶりに

   涙が出た。項羽は、シオンの血により、不死の体を手に入れ、

   スライム一族と出会い、この世のあらゆる英知を学んだ。


   「シオン、君の相棒は、俺だよ。」と微笑んだ。


    孔明が、優しい眼差しでみんなを見つめて、

   「さて、もう察しはついていると思うが、

    この世界の全てを滅ぼしに戻ってくるのは、

    神と神の使徒と呼ばれる異星人だ。」


    項羽は、

    「この地球に存在するすべての世界を滅ぼし、また新しい実験でも

     するのだろう。彼らからすれば人間も天使も悪魔も幻獣も

     すべては、試験官の中の小動物。

     僕は、そんな無責任な奴らのなすがままにならない。

     相手は、ゼウスであり、オーディンであり、シバであり、

     アマテラスだ。お願いだ、一緒に戦ってくれないか?」


     みんなの目に異論も恐怖の色は見えなかった。


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いつかくる滅亡に備えて(短縮版) Judo master @Judomaster

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