your lemonade
粟生屋
🍋
カランコロンと氷の音が部屋に響き渡る。
私は君に毎日レモネードをつくっていた。
いつもの時間に、いつものレシピで、いつもの手順で
レモンを搾り、砂糖と蜂道を混ぜ、氷を入れて、炭酸水を注ぐ。
そして、最後に小さな瓶に入った秘密のエッセンスを一滴。
君だけのために作られ、君だけの特製レモネード
瓶に入った秘密のエッセンスは毒で、少量でずつ飲ませることで効果があった。
そして君の身体をゆっくりと蝕み、ある一定の量に達すると、眠ったように亡くなり、自然死のように見える。
誰も私が君を殺したことに気づかない。
君は毎日私が作るレモネードが大好きで、毎日褒めていた。
君のレモネードは少し酸っぱくて、少し甘くて、少し苦いと。
やがて、君にその日がやってきた。
君の手からグラスが落ち、飲みかけのレモネードが床にこぼれる。
床に広がるレモネードと眠ったように死んだ君。
でも、君のカバンからあの秘密の小瓶が見つかり、君は自殺したことになった。
ありえない。私はそう思い、もう一度レモネードを作った。
いつもの手順で、いつものレシピで、最後に秘密のエッセンスを入れることも忘れずに、違うのは君じゃなくて、私が飲むこと。
作ったレモネードを口に入れる。
レモネードは甘くとも、酸っぱくとも、苦くとも何ともなかった。
ただ、舌に焼け付くような痛みがした。
君は最初から嘘をついていた。
そして、私は知った
君の言うレモネードをもう飲むことができないことを
だって君はもういないから。
your lemonade 粟生屋 @inouuu
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