第2話

「ありきたりなことするわ」

 靴隠し、上履きに画びょう。

「精神年齢いくつなのか」

 小学校高学年のいじめみたい。

 

 正直言って相手するのも面倒だ。無視しておくのが一番いいのかもしれない。


 けれど、これ以上、私物をなくされたり壊されたりしたくない。


「面倒だな。これ以上関わりたくないな」


 関わりたくない。昨日関わってしまったことを後悔している。



「ってかさ、ださくない? あのひとうける」

「あいつほんときもいよな」


 人間の雑談のほとんどは悪口でできている。

 言われたりできなかったりするとすぐに言われる。


 それが誰かをかを傷つけていることだと気が付かない。

 その悪口が自分にむくまで。

 言い続ける。やり続ける。


 人は醜い。


 群れても、一人でも。


 ☆☆

 超いい気味なんだけど

 これからもやってこうよ

 ほかのやつのことなんてかまってられないよね。

 「無視解除すか」

「無視解除、解除」

 全部の力をあの女にそそぐから。

 ほかのやつへの嫌がらせさせている場合じゃないわ。

 転校生が来る前に嫌がらせしていた子は3人。

 解除の命令を受けたらその矛先はどこへ向かうか。

 転校生だ。


 何か月たったことだろう。

 もう冬休みに入りそうだ。

「ってかありえなくない? あのひと」

「ほんとないよ。来なければいいじゃね?」

「しぶといよね」

「本当にね」


 ☆☆


 嫌がらせはエスカレートしていった。

 教科書は破るが、周りの人に助けを求めても知らないふりをされる。

「佐藤さん」

 無視。

「佐藤ライさん」

「なに? 転校生さん」

「やめてほしいんだよね。無視するのとか靴にいたずらするとか」

「私してないよ」

「じゃぁ誰なの?」

「私に関係ないから失礼するわ」


 ☆☆

 カサ、カサ

 またかと思う。


 何度目か教科書が使い物にならないことを予想して、引き出しを開けた。

「旧校舎の女子トイレ」

「トイレ?」

 典型的に閉じ込めるとかあるのだろうか?

 表向きにはスマホは禁止だが、

 最近身の危険を覚えるようになったのでこっそり持っているのだ。

 ポケットに入れてばしょに向かった。


 1か所だけ明かりがついている。

 女子トイレ。

 ぎぃと扉を開けた。


「ここかな?」

 ドン

 体を押されて倒れこむ。

 振り返りそこにいたのは取り巻きの一人でよく佐藤と一緒にいる小野田。



「お前うざいよ」

「言いたいことはそれだけ?」

「だけ。じゃ」


 今回は小野田からの警告だったらしい。

 ただ押されただけ。

 次の日には青タンになっているかもしない。


「あぁー。ひざとひじの汚れついちゃった」


 ため息をつき、立って汚れを落としていた時だった。



 

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性格が悪いヒト 朝香るか @kouhi-sairin

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