第263話 リケラクスのプチ
「納得するしかないけどさ……うん……」
エステルは『お座り』の姿勢を保つポチをちらちらと見ながら呟いた。
明らかに今まで見た中で、断トツに強力な魔獣であることが一目で理解できてしまうがゆえである。
だが。
それだけでこの騒ぎが収まるということもなかったのだ。
どこからともなく響く地響き。
おもむろに一同が視線を砂漠へ向けた時、揃えて喉を震わせた。
「……『
すでにこの状況に疲弊の色を隠しきれなくなっている様子だ。
よくよく見ると
「セキ
「『トキネ』! プチも来てくれたのか~! 正直すごい助かる……!」
『トキネ』と呼ばれた少女はセキへ満面の笑みで手を振っている。
黒髪を両サイドで揺っており、見た目で言えばエディットと同年齢に見えるほどに幼い。
ポチの隣にやってきた
「ポチが感じ取ったみたいでビューンって走っていっちゃって……それでプチと急いで追っかけてきたんだよ~……!」
セキの元へ駆け寄ると喜びを行動で示すように抱き着いた。
頭を撫でられると満足気にえへへ、と笑みを漏らしている様子だ。
「そうだったのか~そのおかげで助かった……」
トキネの頭を撫でつつ、背後のエステルたちへ視線を移す。
「この子は妹みたいなもんかな。『トキネ』って言うコト村の子ね」
セキの体の影から頭だけを覗かせるように、顔を出したトキネ。
やや硬直気味のエステルたちだったが、セキの紹介に合わせて各々が一歩前へ歩み出ていた。
「あ~……オレはグレッグだ。まだ加わったばかりだが……兄ちゃんには世話になり過ぎていつ恩を返せるかが分からねえが……まぁよろしくな!」
「はいっ! セキ
年相応の匂いを感じさせるハツラツとした返事は、この場の空気を朗らかなものへと変えていく。そんな力を持っていた。
「
「ハーイ。ヨロシクオネガイシマース」
明らかにグレッグへの返事とは異なる
――というよりも、目付きも明らかに異なっている。
「あたしはエディットですっ。パーティでは治癒を担当していますが、戦闘ではまだまだなのでこれから強くなってみせます! よろしくお願いしますっ!」
「ハーイ。ユジュツシサマナンデスネー」
言葉は違えどルリーテと変わらない返事である。
「……えっと座ったままでごめんなさい。わたしはエステル。セキとは昔会ったけど、こうしてまた会えて一緒に冒険をすることになりました。よろしくね」
「フーン……あなたがエステルさんですかぁ……」
ルリーテ、エディットに向けていた細い目とは異なり、エステル自身をじろじろと眺めている。
彼女たちに対するトキネの態度はなんとも不可解ではあるが、
(うぅ……警戒されてるなぁ……たぶんトキネちゃんセキのこと大好きなんだろうなぁ……)
察しの良いエステルだけがその糸口を握りしめるに至っていた。
「挨拶も済んだし……まずは村に行ってエステルの治療をしたい。ポチ、プチちょっと村まで頼むな?」
『グル~ォ!』
『ヴォ~ウ!』
セキの言葉に二匹の魔獣が、任せろ、と言わんばかりの鳴き声を上げる。
目を輝かせたエディットとは対照的に、チピはエディットの
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