第236話 ニモリートへ その3
「――で、これがクスクーバで貼られてる『百獣』の情報だ」
煌びやかに光っていた眼が一転し、暗雲に包まれている。
ブラウはこの情報を集める時点で、すでに肩が重くなっていたようだ。
「多すぎじゃない? でもこれがこれからの当たり前なのよね……」
クリルが顔を覆いながら喉を震わせるが、体力に反比例した弱々しい声でもあった。
「セキと一緒の時は意識しなかったけど、トキネさ――トキネに特訓してもらってる時に僕たちも思い知らされたじゃないか……」
己を奮い立たせるようゴルドは樹皮紙を手に取り一枚一枚確認していく。
この行動には
これから向かうニモリートの周辺に通常の魔獣が徘徊していないわけではない。
だが、ランパーブ領を出れば百獣と出会う頻度は、一般の魔獣と遜色ないと言われている。
事実として特訓時、『
「トキネちゃん可愛い顔して太刀筋が鋭過ぎよね……まぁほとんど見えなかったけど……」
「
また、タンタスバーシュ領とランパーブ領は隣合わせというわけではない。
間に無管理地域を挟んでいるのだ。
トキネ付き添いの元、百獣の討伐も経験済ではあるが、確固たる自信にするためにはまだ時間が欲しいというのが三名の共通意見でもあった。
そのステップアップのために新天地を目指すわけでもあるが、道のりは険しい。
「もうトキネに頼ることはできないんだ。だからこそ……この情報と照らし合わせて
「その通りだゴルド!」
「ええ……加えて探知全開でいくわ!」
ブラウが周辺地図を広げると、残りの二名が目撃情報を書き加えていく。
誰もが一言も喋らず集中した結果、大量の目撃情報を地図に記すまでほんの数十分という短時間で仕上げていた。
「千幻樹の騒動もあったから、この周辺も
「そうね。血眼で
「僕も
ゴルドの指先がなぞった道に示した魔獣の情報に目を向ける。
「見てるとほんの数十分歩くたびに百獣やら出てきそうなんだけど……」
「他のパーティと協力して――って言いたいけど、今って時期的に少ないのよねぇ……海路はここ数週間満員って言われてるし……」
「なまじみんな使う
無管理地域への進出は、言わば探求士として成長した証である
国の庇護から抜け出す、独り立ちとも言えるだろう。
だが、言葉でいうほど楽なことではない。
だからこその独り立ちなのだが。
三者三様に頭を抱え地図を睨みつける時間が増えていくばかりであった。
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