第235話 ニモリートへ その2
なぜブラウたちが新しい冒険の地として、タンタスバーシュを選んだのか。
それは
まず、港町ハープが最北端である以上、向かう方角は大雑把に言えば東西南のいずれかである。
ここでまず東に行く選択肢はありえない。
なぜなら死ぬからである。
正確に言えば『大断崖』と呼ばれる崖までであれば生き残る可能性も高いが、そもそもハープから東側に、国家から認識された街が存在しない以上、生き抜くことが困難でもあるのだ。
過去に『ブロージェ』という国が存在していたが、今は滅びている。
次いで南。
こちらもあまり選びたくない方角である。
ハープから南側は基本的に国家の領土がまだまだ届かない未管理の地域が多い。
いくつか街も点在しているが、国家の領土内の街と比べると危険度は明らかに高いと言えるだろう。
南東側に『ジャルーガル』という国家も存在するが、あまり開かれた国という印象ではないため、特別な目的がなければ近寄りたくない、というのが本音である。
よって、ブラウたちは消去法で西に進むことにしていたのだ。
このルートを選ぶ探求士はとても多い。
さらに西へ足を延ばせば魔術を学ぶことができるためだ。
「え~っと……まずは気持ちを新たにしようか。まず当面の目標はタンタスバーシュ領の東に位置する街『ニモリート』に到着すること――」
ゴルドは音頭を取るべく空気を改めた。
「目的は底力の強化だね。剣と魔術、それぞれを国家が全力で支援している以上、学ぶことも多いと思うし……何より僕たちの最終目標でもある『
言葉通りではあるが、言うなれば誰もが描く夢でもある。
この場合、国として領土を確保している地域として見た場合、現状は
「そうね。武器はもう百年冒険を続けても、これ以上の武器を手に入れられる気はしないから、後は
残りの四分の三の地域に
だが、確認された地域として認識されているわけでもないのだ。
幻域に住まう
はたまた文献にすら記されることがない魔獣がいるかもしれない。
そんな未知の発見者になりたい――と。
欲を言えば歴史に名も刻みたい――と。
「噂では
冒険の話になればブラウも、自然と元気を取り戻す。
酒場での笑い話。酒の肴として語られるような噂にこそ神秘が眠っていると、信じて疑わないブラウの瞳は、少年さながらに眩いばかりの星を宿していた。
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