第194話 活力漲る決意
「なるほど……状況は把握した!! この前少し話も聞いてたしなっ!」
「あははっ。エステルたちはいつも誰かのために一生懸命さね~。そして……私たちもそれに助けられて今ここに居るさね……」
「うん……次から次へと集まってきて……これじゃ奥へ進んでも振り切れないし――」
エステルがややもどかし気に歯を軋ませた。
「ですが……この
ルリーテは状況の好転に光を見出し。
「これなら殲滅することも可能ではないかとっ!!」
エディットも好転の波に自身の気持ちを乗せた。
しかし。
「いや――すぐにでも向かいたいんだろ? だから……――」
「ここは私たちが請け負うさねッ!!」
ドライが告げる直前。キーマが待ち切れず喉を震わせた。
「で、でも……
エステルが歯切れ悪く反応するも、ドライとキーマが流し目と共に口角を上げた。
「精選の恩をこんなに早く返せるとは思ってなかったけどな……――ッ!! 出番だぞ……『
「その
「――え!?」
精選で契約したのはキーマだけだったはず――
そんな三者の驚愕の声は
「――〈始まりの水を満たせ〉」
「……〈始まりの火を灯せ〉」
両者の詠んだ降霊詩と共に魔力のうねりが
精霊本体が顕現するほどの魔力ではない。
だが、目視ができずとも明らかに
「
「
表情に見合った活力漲る決意。
落ち着いて相手の出方を伺う姿さえも様になっていた。
「――わ……分かった! でも
「お心遣いに感謝いたします……!」
「はいっ! ここはお任せします!」
ドライたちに圧倒されたと言えば言い過ぎかもしれない。
だが、彼女たちが迷いなく動き出すほどに説得力を醸し出していた。
「ああ。エステルたちの姿が見えなくなったら素直に退散するさ! だから安心して突き進め! 〈
「そっちこそあまりに無茶なことは控えてほしいさね! 〈
峡谷地帯へ一斉に駆け出す彼女たちの背中へ向けられた言葉。
肩越しに振り返ったエステルたちもまた迷いなき瞳と頷きを以って、ドライたちへ答えていった。
◇◆
「よし……抜けたっ!」
エステルたちは走り詰め、光さえも届かぬ森から飛び出した。
眼前に広がる峡谷地帯。
剥き出しの岩肌は苔に包まれている部分も少なくはない。
崖も滑らかな部分よりも、尖った岩や隙間から生えた生命力溢れる木々が顔を覗かせていた。
高低差も激しく死角となる場所も多々見受けられたため、探索及び奇襲により警戒を要することを彼女たちは感じ取っていた。
「探索とはいえバラバラになるのは得策ではありません……非効率ですが――」
「――ぬがっ! も~! チピうるさ~い!」
ルリーテの隣のエディットが頭を抑えつつ降霊を解除した。
すると、緋色の魔力がうねりチピの体を作り出した。
『チピィィィィッ!! チピピ!』
チピがエディットの頭上でおおよそ東の方角を指し騒ぎ立てる。
「もしかしてダイフク様……そっちにグレッグ様が……?」
ルリーテが呟くとチピは体ごと首を傾げた。
つぶらな瞳から判断するにアテが外れたと
『チピ~……チププッ!!』
さらに次は足元の崖の奥を不安気な眼差しで見つめ始めたが。
「ダイフク。この前まで一緒にクエストしてた男の
すると。
エステルと向き合っていたチピが翼を広げ飛び立つ。
足元の崖の中腹へ滑空していくと、岩壁の割れ目の中へと姿を消していった。
「……――行ってみよう!」
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