第158話 悲壮の能力
「――え……? 実際に見えるってことですか?」
「そんなはっきりと何かが見えるわけじゃないけど……その
ルリーテの納得理由を深掘りした結果である。
エディットは隣を歩くエステルを見上げ、未だに訝しげな眼差しを向けているが、
「それで全て決めるってわけじゃないけどね。たぶんそう見えてること事態、わたしの主観が混ざってるんだろうし」
「ですが、とても興味深い能力だと思いますね。善意であれば明るく見え、悪意を持っていれば暗い。無意識に垂れ流すという魔力に現れて、それを見ているのかもしれませんね」
エディットの隣で歩幅を合わせるルリーテ。
共に暮らしていた彼女はもちろんこの能力を知ってはいる。
だが、理屈を理解しているわけではないのだ。
「でも事実ならすっごい便利ですよね……ん? あれ? 精選の時に魔獣に追いかけられてた
「うん。でもさっきも言った通り、それで決めるってわけじゃないから、悪意が見えれば警戒度を高めて~とかそういうレベルの話だけどね」
指先をこめかみに当て、照れくさそうにはにかむ。
エディットもやや考え込むように無言で歩を進めているが、思い返せば合点の行く行動を取っていることは事実であった。
「なんか納得できそうな気がしますが水臭いですねっ。もっと早くに教えて頂いてもよかったかと思いましたよっ」
エディットの中で腑に落ちたのか、潜めていた眉も元通り。
軽く先へ走っていくと振り返った。
「あはっ。わたし自身もどこまで信じていいか分かってないことも多いから……変に伝えて混乱しちゃうのもな~と……」
バツが悪そうに視線を明後日の方角へ向ける。
「たしかに判断の一材料として~なので、説明も難しいかもですがっ! でもあたしや再会したセキさんはそういう点で見ても明るかったということですね!」
「え~と……エディはすっごい明るかった。でも……セキは明るくも暗くもなかった……? そういう気配を隠すのが上手なのかもしれない……?」
「やはりセキ様ほどの
約一名、能力とは別の視点で満足そうに頷いている様子。
だが、ここまで死地を共に歩んだ仲間である以上、扱いにも慣れた頃合いである。
すでに夢見る少女と化したルリーテを軽やかに視線から外し、エステルとエディットの会話は続いていた。
「生まれ持った能力なのでしょうか? 聞いたことありませんがっ」
「あ~……え~……言いづらいなぁ……まず生まれ持ってじゃない……」
頬を掻きながら瞳を泳がせる。
「ほら……わたしの場合、白霧病があったから……
エステル自身もきっかけが後ろ向きなことを自覚しているのか、利便性とは裏腹に歯切れの悪い口調が続いている。
「お……おぉ……そういうことことだったのですね……」
聞いたエディット自身も目を逸らしつつ、やや視線を落とすあたり踏み込みすぎたという気持ちは少なからずあるのだろう。
「で……ですがっ。そういうきっかけだとしても出会いと別れを繰り返す探求士として見れば、判断材料を増やせるのはありがたいかとっ……!」
「あはっ。きっかけはともかくだけど、うん……エディの言う通りだと思ってる。笑顔の裏に獣を飼ってるなんて珍しくもないし。うまく付き合っていけるといいなーって今では思えるから!」
宿への帰路で思わぬ話の流れ。
いつの間にか本来の目的であるグレッグの話から逸れてはいたものの。
仲間同士の秘密とも言えるやりとりは、彼女たちの結束をより強固にしたことは確かであった。
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